皇后時代の「寄り添う」装いと一貫した美学

 1990年(平成2年)、即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」でお召しになった、ケープスタイルのドレスも印象的です。肩から優美に流れるケープが、肌の露出を抑えながら、白いドレスに荘厳な美しさを添えていました。

 こうしたケープスタイルは、皇后となられてからの美智子さまの定番となりました。威厳と優しさを兼ね備えた、独自のファッションを築かれたのです。

 また、頭部にちょこんと乗せるような小ぶりな帽子も、皇后時代を象徴するスタイルのひとつです。この小さな帽子は、訪問先でお会いする人との間に距離をつくらないようにという、相手への深い配慮から生まれたデザインと言われています。

 装いの美しさと、人に寄り添うための心配り。その両方を大切にされる美智子さまの美学が、細部にまで息づいています。

  国際舞台における美智子さまの細やかな心配りも、ファッションの随所に生かされています。

 2007年(平成19年)のバルト三国ご訪問では、それぞれの国の国旗の色を取り入れた装いをお召しになりました。外国を訪問される際には、国旗の色やその国を象徴する花にちなんだモチーフなどを、装いのどこかにさりげなく取り入れておられました。エストニアを訪問された時には、国旗の色である、青・黒・白のセットアップを身にまとい、またリトアニアでは、胸元に国旗の黄・緑・赤のコサージュをあしらわれていました。言葉以上の親愛と敬意を表現され、友好関係を深めていかれたのです。

上皇后時代――控えめな装いに宿る、変わらぬ気品

 上皇后となられてからの美智子さまは、表舞台にお立ちになる機会こそ控えめになられましたが、新年の一般参賀やご静養などお出ましの際に垣間見るお姿は、今も変わらず気品に溢れています。華美に飾るのではなく、シルエットの美しさ、上質な素材といった小物使いで「控えめでありながら存在感のある上品さ」を漂わせています。

 美智子さまの装いが時代を超えて私たちの心を打ち、大きなインパクトを与え続けてきた理由——それは、「装いは相手への敬意である」という一貫した美学があるからにほかなりません。時代やお立場に応じてその姿を変えながらも、根底にある「敬意と誇り」は今も変わらず、私たちに装うことの本当の意味と魅力を教え続けてくれています。