過去の行いに囚われたまま大人になった2人の青年と、彼らの運命を狂わせていく「メンター(助言者)」の歪な再会を描いた映画『mentor』で、アーチェリーのオリンピック日本代表候補として奮闘する主人公・龍之介を演じる磯村勇斗さん。故郷での長期撮影を経て感じた思いや日々心掛けていることについてお話を伺いました。
過去は気にしないほうです
――本作『mentor』は磯村さんの出身地である静岡県沼津市でもロケが行われましたが、そこで龍之介という役を演じた心境はいかがでしたか?
これまでも何度か沼津で撮影したことはありましたが、その中でも今回はいちばん長期にわたって撮影した作品でした。学生の頃に通っていた駅前のロータリーや通学路など、思い出のある場所でも撮れたので、不思議な気持ちにもなりました。
地元で撮影できるからこそ、「龍之介はここで育ってきたんだな」とリアリティを持って考えることができました。だからこそ「できるだけ使えるものは使って表現したい」という思いで撮影に臨みましたし、その土地の空気や匂い、香りなども含めて、役作りのプラスになったのではと思います。
――「過去とどう向き合うか」が本作のテーマのひとつですが、磯村さんご自身は、この映画を通して新たに芽生えた気持ちはありますか?
(末澤誠也さん演じる)友人の拓海は過去に留まってすがりついて生きている人間ですが、僕が演じた龍之介は「やっぱり前を向いて進んでいくしかない」と切り替えて生きてきた人です。僕自身、仮に過去に後悔することがあったとしても「進んでいかないと新しい道は生まれないし、何も作れない」という考え方なので、龍之介には共感しかなかったです。だからこそ、今回は新たな発見というよりも「そうだよな……」と納得しながら演じていました。
――そんな龍之介はアーチェリーのオリンピック日本代表候補として自分を高め、前に進もうとしますが、アスリートといえばルーティンを実践する方が多い印象です。磯村さんが日々行っているルーティンなどがあれば教えてください。
実は特にないんです。もちろんルーティンの強みは知っていますし、精神のブレをなくす効果はあると思います。でも、あくまで僕自身の考えですが、ルーティンを守ったからといって必ず勝てるわけではなく、ミスをするときも、負けることもある。そう思ったら、「ルーティンをやらなきゃ!」というプレッシャーに支配されるくらいなら、作らないほうが自由に動けますし、何かあっても気にしなくなるだろうという考えに至って。いまは本番に向けて集中することを大切にしています。
――撮影現場ではどのようなことを心がけていますか。
なるべくリラックスするように心がけていますが、リラックスしすぎてもダメなので(笑)、「緊張と緩和」のバランスは大事にしています。いかに自分のペースでやれるかというところに重きをおいています。
作品ごとに現場の雰囲気は異なりますが、今回の𠮷田恵輔監督はとても楽しい方で、みんなが話しやすい空気を作ってくださいました。それに地元で撮れたことや、(埜本役の)綾野剛さんはお互いをよく知る仲だったので、シーン的にはシリアスでも、どこかコメディをやっているような気持ちになる場面も多くて、緊張感とリラックスの両方を保ちながら撮影できたと思います。
文=くれい響 写真=佐藤 亘 ヘアメイク=佐藤友勝 スタイリスト=笠井時夢
