「関係者以外お断り」の映画を観る驚きの裏技とは?

カンヌのビーチ沿い、クロワゼ大通りにはブランドショップと高級ホテルがずらり。レッドカーペットもすぐそこ。

 次に、どうやって映画を観るか。カンヌの公式上映では東京国際映画祭やヴェネチア映画祭のように一般向けにチケットを発売していないため、招待状かプレスパスなどがない限りパレで観ることはできない。しかし上映作品の多くは映画祭での上映とほぼ同時にフランスで封切りされるので、これぞという映画があったら近くの映画館で観ることができる。

こちらが監督週間の会場。高畑勲監督の『かぐや姫の物語』も上映された。

 また、監督週間や批評家週間といった部門は別会場(パレから徒歩10分から15分程度)で上映され、当日券も販売している。こちらにも大物が登場するので、あなどれない。4年前にはローリング・ストーンズのドキュメンタリー『ストーンズ・イン・エグザイル』の上映でミック・ジャガーが登壇したことも。

「招待状ください」と会場前でアピールする青年。もらえたときのために、しっかりタキシード姿。

 それでも、どうしてもスターと一緒に公式上映を観たい、レッドカーペットを歩いてみたい、という人には裏技を伝授しよう。「INVITATION, SVP」(招待状をください)というカードを持って、会場前でアピールするのだ。SMAPのコンサートのとき東京ドームの前で「チケット譲ってください!」ってカードを持つ人をよく見かけるけど、あれと同じ。

実は私たちプレスは試写のために、毎朝レッドカーペットを歩く。夜と違って普段着でもちろんOK。なにせ朝8時半だもの!

 違いは、カンヌでこれをやってる人たちはみんな正装していること。実は夜7時以降の公式上映はソワレと呼ばれ、ドレスコードがあるのだ。運よく招待状を関係者から恵んでもらっても、カジュアルな服装では中に入れてもらえない。だからあらかじめ、ドレスアップしていくというわけ。女性はワンピースでも大丈夫だが、男性はタキシード必須なのでちょっとハードルが高いものの、アジア映画などはチケットが余ることが多いので、トライしてみるのも一興。

 まあ、もらえなかったら、そのまま近くのレストランで素敵な夜を過ごせばいいだけ。隣でセレブが食事をしている可能性も十分あり。そんなハプニングが期待できるのもカンヌの醍醐味なのだ。

石津文子 (いしづあやこ)
a.k.a. マダムアヤコ。映画評論家。足立区出身。洋画配給会社に勤務後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。映画と旅と食を愛し、各地の映画祭を追いかける日々。ときおり作家の長嶋有氏と共にトークイベント『映画ホニャララ はみだし有とアヤ』を開催している。好きな監督は、クリント・イーストウッド、ジョニー・トー、ホン・サンス、ウェス・アンダーソンら。趣味は俳句。俳号は栗人。「もっと笑いを!」がモットー。