ミラノ・コルティナ冬季五輪で金メダリストとなったアリサ・リウ選手は、Z世代の新たなアイコンであり、ヒーローだ。史上最年少での全米選手権優勝から16歳での電撃引退を経て、その2年半後、復帰わずか9カ月の練習で世界一へ。20歳の彼女のポジティブな演技とマインドセットは、その裏に壮絶な挫折から復活した経験があったからこそ、観るものの心を動かす。同じアジア女性として大人である我々のことをもエンパワーしてくれる、彼女の勇気ある生き方にフィーチャー。

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「スケートは競争ではなく、アート」

 ミラノ・コルティナ冬季五輪で金メダリストとなったフィギュアスケートのアリサ・リウ選手が、アスリートの枠を超えZ世代の新たなポップアイコンとなっている。黒と金髪のストライプの「年輪ヘア」と、歯のスマイルピアスという独特なスタイル。レディ・ガガやピンクパンサレスのポップミュージックに乗せて滑る、プレッシャーを微塵も感じさせないリラックスした演技。―保守的だったフィギュアスケート界の反逆児とも言える彼女のその姿に、観客はたちまち恋してしまった。彼女の演技に歓声を上げる観客の様子はオリンピックのそれではない、まるでテイラー・スウィフトやサブリナ・カーペンターのライブを観ているかのような喜びと興奮に溢れている。こんなフィギュアスケート競技は、今まで見たことがない。

 彼女の育った街、カリフォルニアのオークランドの20代女性はニュースサイト「SF GATE」のインタビューで「彼女のエネルギーが大好きです」と語った。「彼女は私に自分らしくいてもいいんだと安心させ、自信を与えてくれます。彼女はそのエネルギーを世界中に届けています」。今、世界中のファンたちが同じことを感じている。通常は緊張感漲る五輪のステージで、自然体で力みなく楽しそうに舞うから、見ているこちらまで嬉しくなり、感動して涙が溢れて来る。それは「金メダルは必要ない」と言った彼女が「スケートは芸術」と語ったように、アリサ・リウの演技は競争ではなくて、表現することへのピュアな喜びから成り立っているからなのだろう。人は素晴らしい芸術を観たとき、心を動かされるものだから。アリサは言う。「歌手はパフォーマンスしても点数はつけられないでしょう。それが私の、競技に対する考え方。私たちはみんな、独立したアーティストだから」

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