自然の姿をお手本に飾る

木の椅子×緑=やすらぎ、といった式ができそうなほど相性のいい組み合わせ。椅子の大きさや素材感、緑の形や雰囲気が変わると、また印象が変わる。部屋に合った、美しいバランスを見つけて。

 私は活け花を学んだことがないのであくまで自己流ですが、花あしらいのうまい叔母が“山にあるように、野にあるように”と言っていた教えを大事にしてきました。

 緑の枝ものはうまく水揚げできれば10日でも1カ月でももってくれます。知らぬ間に枝葉が成長して「あらっ、蕾がついてる」なんて発見すると、何ともうれしい。仕事で失敗したときに枯れた枝から復活している新芽がついているのを見ると、「よし、私もガンバロウ!」と心励まされたりするのです。

ツルもの植物など、葉っぱや茎の流れが美しいものは棚や出窓など余白がある場所が似合う。花器からゆったり枝葉をたらす様子が絵になる。

 飾った花器の置き場所についてですが、主張しすぎないことが大切です。生活の動線のじゃまにならないかどうか、家具や雑貨との相性なども考えたうえで、そこで過ごす人の心をなごませるよう、心地よい風景になるように置きます。

 もちろん置かれる花や緑の側にとっても、「居心地よく過ごせる場」が原則。エアコンなどの空調の送風があたる場所はよくないし、急激な温度変化などストレスのある環境を与えると、人だって病気になるように、植物だって調子を崩します。気難しがり屋の植物だっているのですから、うまくいかないときだってあります。調子が悪いときは、水や日当りはどうだろう、って気持ちを傾けて眺め続けていると、わかることもありますよ。

堅い枝ものは長持ちさせるために私流の「いじめる」水揚げをする。刃物で切り込みを入れたり石で叩いたり。切り口から白いアクがでるような植物は枝元を焼いて、水を吸いやすくしてあげる。大ぶりの枝ものや実のついた緑は、動線のじゃまにならない場所を選ぶ。下に実や葉がこぼれることも想定して。うちではテレビ棚の高いところが定位置。下から見上げると一層きれい。

石村由起子 (いしむら ゆきこ)
奈良在住。全国からファンが訪れるカフェギャラリー『くるみの木』と、ミシュラン一つ星のホテルレストラン『秋篠の森 「なず菜」』のオーナー。
暮らしを楽しむ祖母の知恵にくるまれて育ち、学生時代には染織を学び、民藝を入口に手仕事に精通。自らのショップで展開する、暮らしの道具のセレクト眼にもファンが多い。さらに近年は、生活プロデュースの視点での商品開発、街おこしプロジェクトなど幅広い分野からオファーが引きもきらない。著書に『私は夢中で夢をみた』(文藝春秋)、『奈良・秋篠の森「なず菜」のおいしい暮らしとレシピ』(集英社)など多数。HP 「くるみの木」 http://www.kuruminoki.co.jp

Column

石村由起子の暮らしの“ツカミドコロ”

石村由起子さんといえば、人気のクラフト作家や料理家、エッセイストなど生活美学のある人たちが一目おく、暮らし上手です。
祖母から受け継いだ知恵と礼節、愛するモノを捨てずに活かすワザ、「これだけは」と手をかけてきた習慣など、多忙な日々のなかでも心豊かに暮らすために石村さんが「大切にしてきた」視点とアイディアを、CREA WEB読者に指南。年齢をこえて共感できるチャーミングな暮らし術を、プライベートフォトを添えて綴ります。

2014.07.03(木)
文・構成=おおいしれいこ
撮影=石村由起子