地元の食材を昇華させ、皿ごとに広がる豊かな味わい。

 新潟の人々の暮らしには、季節ごとの楽しみがあります。夏になると、畑ではさまざまなナスが実をつけ、地元ならではの味わいを届けてくれます。三条や魚沼の畑では、色も形も異なる白ナスや紫ナス、丸ナスなどが育てられ、市場には出回らない珍しい品種も少なくありません。

「佐藤大農園の白ナス『りんごあめなす』は、特に瑞々しくて甘みが強いんです。手に取るとずっしりと重みがあって、焼いても煮ても味がしっかり残ります。佐藤さんの育てたナスは、どれも驚くほどの個性があって、夏の食卓を豊かにしてくれます」

 5品目は、素材の個性をじっくりと味わう、滋味あふれるスープです。

「月の輪熊と魚沼のスッポンをスープにしました。スープは熊のコンソメとスッポンの出汁を合わせており、それだけでも十分に濃厚ですが、そこに佐藤さんのりんごあめなすを参戦させました」

 熊の肉は臭みがなくてやわらかく、嚙むたびに脂の甘さがじんわりと染み出すジューシーさ。プルプルとコラーゲンたっぷりの魚沼スッポンは、あっさりとした上品な味わい。さらに、りんごあめなすは「熊とスッポンに負けないくらいのナス!」とシェフに称されるほど、甘みが際立ち、まさに別格のおいしさです。

「うちのりんごあめなすは、普通のナスより糖度が高くて、苗や根にわざとストレスをかける“スパルタ栽培”をしているんです。収穫量を優先せず、味をいちばんに考えているので、栽培期間はたった4か月。F1品種じゃなくて、自分たちで種を取ったものを使っています。寒暖差や水の管理も徹底して、甘みや旨みを最大限に引き出すようにしているんですよ」と話す佐藤さん。

 全国から注目されるナスは、県内での流通はほとんどなく、まるで逆輸入のように、東京から訪れたゲストによって紹介されたのだそう。その甘みと瑞々しさを味わいながら、次の料理への時間が静かに流れます。

 メインとなる肉料理は、井上シェフが仕留めた猪の肩ロースを、ジビエの出汁をベースにしたマデラ酒のソースで仕上げたもの。

「主役である猪は、冬のいちばん良い時期に仕留めたものを使いました。付け合わせのアカヤマドリは、夏が旬のキノコで、海外のボルチーニに似た風味があります。畑で育てた京まつりというピーマンや畑で野生化しつつあるルッコラ、ニラの花も添えています」

 猪肉のしっかりとした旨みと、マデラ酒の持つカラメルやナッツのようなニュアンスが口の中で響き合う、贅沢な味わいのひと皿です。

 この日のコースは季節のデザートが2回に分けて供されました。まず1品目は甘みたっぷりのトウモロコシ「鬼もろこし」を使ったアイスクリームです。

 新潟県の南端、雄大な山々と清らかな水に恵まれた津南町。昼夜の寒暖差が大きく、甘みの強い高原野菜が育つことで知られています。その豊かな土地で「鬼もろこし」を育てているのが、鬼や福福(おにやふくふく)・島田農園。土づくりから丁寧にこだわり、自然の力を最大限に引き出して育てたトウモロコシは、生でも驚くほど濃厚な甘みと香ばしさが広がります。

「極力、砂糖や乳製品は使わず、ほとんどがトウモロコシなんです。本来の個性をダイレクトに味わえるアイスクリームですね。それくらい甘いんですよ。裏ごししたあとがもう、すごくねっとりしていて、とろーんとしている。溶けてもドローンとするくらいなんです」

 続いては、幻の黒いダイヤとも呼ばれる佐渡産の黒イチジク「ビオレ・ソリエス」を使ったデザート。皮が薄く、果実がとろけるほどやわらかく、濃厚な甘みと香りが特徴の希少な品種です。

「ビオレ・ソリエスを石窯でローストして、それを紅茶風味のクレームブリュレ仕立てにしました。添えているのは、イチジクの葉の香りをつけたアイスクリームです」

 長岡にある加瀬牧場のガンジー乳から手づくりしたアイスクリームに、イチジクの葉の香りをうつし、果実の甘やかな余韻と重ねています。皿を彩る赤いソースはルバーブ。やさしい酸味がブリュレのほろ苦さとローストした果実の深いコクを引き立て、味わいに奥行きをもたらします。

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