土と水と人が近い町、新潟県三条。夏の「Restaurant UOZEN」では、地元農家の野菜やキノコ、川の恵みの鮎、海のマグロ、山のジビエまで、土地の四方から集まる食材が、ひとつのテーブルに集います。
食材の端材も、シェフの手で新たな一皿に生まれ変わる。「無駄をつくらない」その哲学が、料理の深みに息づいています。
» 畑、川、海、山ーー生産者と料理人が紡ぐ、食の物語。
» 地元の食材を昇華させ、皿ごとに広がる豊かな味わい。
» 食の魅力を広げる、新潟ワインや日本酒とのペアリングも。
畑、川、海、山ーー生産者と料理人が紡ぐ、食の物語。
地産地消のお手本のようなフレンチレストラン「Restaurant UOZEN」。夏のフルコースは、多彩な食材を活かした一皿が次々と登場します。オーナーシェフの井上和洋さんが自ら海で釣り上げた本マグロ、五十嵐川で採れた鮎、畑の夏野菜や夏キノコ。もちろん、ジビエも楽しめます。
フルコースの幕開けは、恒例のアミューズから。定番の「ジビエドッグ」と猪のリエットを詰めた「タルト」に加え、「猪のサラミ」と「鮎のパテ」の4品がお目見え。視覚的にも楽しめる、アートのようなプレゼンテーションで供されます。
「ジビエドッグ」は井上シェフが自ら仕留めたジビエの端材をミンチにし、アメリカンドッグのように仕立てた逸品ですが、肉の端材を無駄にしないという考え方は、サラミ作りにも受け継がれています。
「ローストに向かない脂の少ない部分や端材は、これまで肉醤にしていたのですが、今年はサラミも作ってみました」と井上シェフ。猪を仕留める狩猟時期には、肉をマイナス60度のスーパー冷凍庫にストック。生肉での提供が終わる春から夏にかけて、ここから仕込みを始めます。冷凍庫の空きが出ると、次は自分が釣ったマグロを入れるというサイクルで、スペースも無駄なく活用しているそう。
「サラミの上には、低温でじっくり熟成させた栗を添えています。上越市の宮沢栗農園さんが手がけた栗で、今日はそれを揚げて合わせました」
揚げた栗の香ばしさと甘みがサラミと絶妙に調和。ひと口ごとに、野性味あふれる肉の味と栗のこっくりとした甘さが口の中で溶け合い、深みが増していきます。さらに、オキサニスという酸味のあるハーブが軽やかなアクセントに。
「五十嵐川の上流、生活用水も流れないほどの清流で育った鮎を丸ごと使ってパテに仕上げました。内臓もすべて加えることで、鮎本来の旨みを余すところなく楽しめます」
肝も全部使っているため、ほんのり苦味があって濃厚。そこに新潟の在来野菜「かぐら南蛮」を軽くマリネしたものをあしらい、しっかりした辛みが鮎の味わいを引き立てます。
4つのアミューズは、まるで夏の物語の序章。三条の自然と人の手のぬくもりを、最初のひと口から感じることができます。
2品目は、佐渡の本マグロ(クロマグロ)を主役にした「マグロのマリネ」。中心にマグロを置き、そのまわりを昆布締めにしたクジラの赤身肉のタルタルで包み、さらに外側をパプリカで巻き上げたものです。
「それを輪切りにカットして、夏の天然キノコ、タマゴタケを添えています。山や海、あちこちの素材を組み合わせ、コシヒカリのパフをジビエの肉醤で風味付けして散らし、パリッとした食感と旨みも楽しめる一皿に仕上げました」
薄くスライスしたタマゴタケは、外側の朱色と内側のひだのような黄色のコントラストが鮮やか。やわらかな食感とほんのりとした甘みが特徴です。その穏やかな風味が、マグロやクジラの濃厚な味をやさしく包み込み、皿全体に軽やかさを添えています。
「キノコは秋のイメージが強いですが、夏にも魅力的な種類が多く、うちでもけっこう使うんですよ。タマゴタケは生でも食べられる珍しいキノコで、香りがよくて食感もいいんです」
「夏は自分で釣ってきた本マグロ、アカムツ、キジハタなどが助けになります。また、同じ魚でも内臓や皮などの部位も使ったり…。マグロなら胃袋や心臓も料理します。ひとつの魚からさまざまなおいしさを見つけることが面白いですね」
新潟県産の小麦粉を使った自家製パンは、大理石の台で丁寧にこねられ、コロンとしたフォルムに仕上げられます。オーブンから出たばかりの香ばしい香りと、しっとりもっちりの食感は、同店の料理をそっと引き立てる、相棒のような存在です。
次なる料理は、毛蟹と黄金桃を合わせた「毛蟹のガレット」。ガレットは通年提供される定番ですが、季節によって巻く食材が変わります。これまでには山女魚や猪肉、アスパラガスなどが登場しましたが、今回の主役は佐渡の毛蟹。毛蟹には蟹みそを加えたソースを添え、セロリのマリネも合わせています。
「決め手となるのは三条市大島地区名産、三次郎農園さんの黄金桃です。薄くスライスしてガレットに巻き込むと、カニの旨みとフルーツの甘みが絶妙に溶け合います。アクセントに、畑で収穫したフェンネルシードのピクルスを添えて、爽やかな風味を加えています」
魚沼産の蕎麦粉を使ったガレットには、蕎麦の実もかかり、手でぐるりんとロールして、カニの出汁入りサバイヨンソースをたっぷりつけていただくワイルドな逸品。濃厚で豊かな味わいが、口いっぱいに広がります。
続いて供されたのは、「夏鹿のパテ・アンクルート」。猟期ではないため駆除された鹿肉を使用していますが、鹿のハツや肉を余すことなく用い、クラシックなフランス料理の技法で仕上げています。パテはタルト生地で包みオーブンで焼き上げた後、上からコンソメジュレを注ぎ、ピスタチオなどのナッツを香ばしく絡ませます。
「以前も提供していたものの納得がいかず、今年ようやく完成度の高い形でお出しできるようになった一皿です。鹿肉も調理過程では多くの端材が出ますが、すべて活かすよう工夫をすれば無駄がありません。お肉を変えて、うさぎやミックスで提供することもあります」

