世界遺産を巡るベトナム
ベトナム中部にある人気の世界遺産都市ホイアンを訪れるなら、滞在はラグーナ・ランコーがいい。古都を散策した後はリゾートで休息、そしてまた街へ。それぞれの魅力を存分に堪能できる最高の休日がはじまる。
近世の面影を残す街にゆるやかな時間が流れる
南シナ海へ流れるトゥボン川の河口にある小さな街ホイアンは、近世、世界的な貿易港として栄えた。17世紀頃には日本人街が造られ、最盛期には1000人以上もの日本人が住んでいたという。華僑も多く移り住んだ。やがて交易の中心がほかに移ると貿易都市としてのホイアンはゆるやかに衰退していく。以降、街は時代に取り残されたかのように、往時の面影のまま穏やかな時間の中に佇む。
旧市街の散策は来遠橋(日本橋)から。屋根付きで小さな建物にも見えるこの橋は1593年、当時ホイアンに住む日本人が中心になって架けたと伝えられている。橋の両側には猿と犬のユーモラスな像が安置され、内部には小さな祠が造られた。今ではベトナムを代表する観光名所となっていて、常に多くの観光客で賑わう。
右:街中ではカゴを担いだ人が地元の新鮮なフルーツを売る。
人ごみを抜け通りに出るとクリームイエローの町家が並び、美しいランタンが頭上を彩る。低層の建物は陰陽瓦の屋根と土壁で造られており、細工の施された扉やバルコニーのある家も多い。間口が狭く奥に長い家屋はどこか京都の町家の風情も漂う。カゴを担いだ物売りやシクロが行き交い、軒先では住人がのんびりと通りを眺める。どこまでものどかでゆったり。目的を持たずに散策するのが最適な街だ。
2014.07.03(木)
撮影=榎本麻美
コーディネート=隅野史郎