熱海海上花火大会(静岡県)

「昇朴付芯入変化菊」(のぼりぼくつきしんいりへんかぎく):紅色の光彩が夜空に昇っていき、紅色の輪(芯)に開いたあと、大輪は赤橙色で尾を引きながら青色に変色してピカッと強く光る「光露」となって消えます。紅色の芯の周りをよく観察してみると赤橙色にみえますが、この炭火色で尾を引くものを「菊」の花火といいます。

 熱海温泉は、江戸時代には徳川家康も入湯し徳川家御用達の名湯となったようです。今は東京から新幹線で40分程度。首都圏の身近な温泉地のひとつです。

 全国各地に花火大会が催される温泉地があります。北海道には洞爺湖温泉、石川県には和倉温泉など、それぞれに魅力的です。しかし、ホテルや旅館などの客室の窓からこれだけの花火が楽しめる好条件のところは国内にそうはありません。宿泊施設によっては、露天風呂や内湯から花火を見ることができるでしょう。

 熱海湾は、三方が山に囲まれたすり鉢状の地形で、いわば巨大なスタジアムのようなものです。そのため、背景の山々にこだまして花火の音がよく響きます。その効果が最も感じられるのが、フィナーレの「大空中ナイアガラ」。ナイアガラといえば、一般には地上に仕掛けた一斉に吹き下ろすような花火のことですが、熱海では幅一キロにわたっていっせいに打ち上げられる銀冠菊という打ち上げ花火で表します。銀冠菊は開花したあと、下に美しく枝垂れるため、ナイアガラ瀑布のように見えるのでその名があります。

 熱海海上花火大会は、1949年(昭和24)年8月「キティー台風」による災害、翌年の「熱海駅前火災」等の復興を目的に1952(昭和27)年に初開催され、今日まで続いています。

大会概要
【大会名称】 熱海海上花火大会
【開催場所】 熱海湾
【観覧席】 有料観覧席あり(要予約)。当日券あり
【アクセス】 熱海駅からサンビーチまで徒歩約15分、親水公園第1工区まで徒歩約20分
【URL】 http://www.ataminews.gr.jp/hanabi/
【問い合わせ】 静岡県熱海市観光協会 TEL:0557-85-2222

泉谷玄作(いずみや げんさく)
写真家。1959年 秋田県に生まれる。花火の撮影をライフワークとする。現代美術作家、蔡國強(Cai Guo-Qiang)氏の依頼で、2002年MoMA(ニューヨーク近代美術館)主催の「動く虹」の花火や、2003年ニューヨークセントラルパーク150周年記念の「空の光輪」の花火などを撮影。著書に、『心の惑星-光の国の物語』(クレオ)、『日本列島 四季の花火百華』(日本カメラ社)、『静岡県ふくろい遠州の花火』(日本カメラ社)、『花火の図鑑』(ポプラ社)、『花火の大図鑑』日本煙火協会/監修 (PHP研究所)、『日本の花火はなぜ世界一なのか?』(講談社+α新書)など、花火に関するもの多数。日本写真家協会会員。

2014.07.04(金)
文・撮影=泉谷玄作 撮影協力=ウオミサキホテル