短編集の中から好きなものをひとつだけでも
さて「読書が嫌い」といっても、その理由は人それぞれです。読まずにドラマを観て感想文を書くのは極論ですが、本を読むのに長い時間をとられることが、苦痛な場合もあるでしょう。そこでお勧めしたいのは「短編集を選ぶ」こと――褒められるべきことかどうかは置いておいて、これなら1冊すべて読まずとも、1篇だけを読んで書くことが可能になります。ただし緩やかにストーリーが続く連作短編集や、日常のミステリーの類はあまり向かないかもしれません。
この夏、読書感想文向きの短編集として、鉄板でお勧めしたいのは、青春小説の名手・額賀澪さんの最新刊『天才望遠鏡』。今年、デビュー10周年を迎えた額賀さんは、本作で5人の天才たちを登場させています。史上最年少でプロ入りした棋士、かつての「氷上の妖精」、抜群の歌声でオーディションを駆け上がる中学生、中央競馬を引退して競技馬に転向したサラブレッド、性格にかなり難があるベストセラー作家……将棋、フィギュア、芸能界、競馬、作家など、いずれか興味を惹かれた短編を読むだけであれば、読書のハードルはかなり下がるはず!

さらに、額賀さん自身、「読書感想文を苦しまずに書くコツ」をブログにまとめており、こちらは電子書籍『読書感想文を苦しまずに書く!』としても発売中。電子書籍版には、『天才望遠鏡』の第1話「星の盤側」が収録され、高校生がこの短編を読んで書いた実際の感想文も掲載されてるので、こちらも参考になりそうです。
小学生であれば、額賀さんの『読書感想文が終わらない!』をヒントに、物語を読みながら書き方を学ぶこともお勧めします。
2025.08.07(木)
文=文藝出版局