小説とドラマの奇跡的な相乗効果

 そもそも、本作は第70回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高等学校の部)であり、定時制に通う年齢もバックボーンも異なる生徒たちが、科学部を結成してやがて全国大会へ挑むという胸アツの青春小説。最初から読書感想文向き書籍として誰にでもお勧めできる要素がぎっしり詰まっています。

 ドラマでは、理科教師の藤竹を窪田正孝さんが演じ、第1話「夜八時の青空教室」では不良青年の岳人、第2話「雲と火山のレシピ」では子供時代に学校に通えなかったアンジェラ、第3話「オポチュニティの轍(わだち)」では保健室登校を続ける佳純、第4話「金の卵の衝突実験」では中学卒業後に集団就職した70代の長嶺と、「もう一度学校に通いたい」生徒たちの葛藤が丁寧に描かれ、放送を重ねるごとにSNS上でも評判がどんどん上がっていきました。

 実は、このドラマの第1話から第4話のタイトルは、小説の第1章から第4章までとまったく一致しています。小説が7章仕立て、ドラマが10話仕立てであることから、ドラマのみ途中でJAXAサイドのオリジナル要素は加わるものの、藤竹先生の過去が明らかになり、ラストの学会発表という見せ場にも、大げさな脚色はほとんどありません。現在Amazonプライムで配信中のドラマ『宙わたる教室』を観て、安心して読書感想文に臨めるのではないでしょうか。

 もちろん、本書のレビューでは、「ドラマに興味を持って原作を読んだら、より作品世界が楽しめた」といった声が多く見られます。小林虎之介さん演じる岳人のファンになった、という理由(原作者の伊与原新さんもそのひとりです)がきっかけでも、充分に小説『宙わたる教室』を丸ごと読むモチベーションになると思います。 

2025.08.07(木)
文=文藝出版局