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【大奥展】冨永愛さんインタビュー
特別展「江戸☆大奥」レポート
大奥にいたら速攻で外に出るか、上り詰めるか(笑)

――『大奥』と『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』出演された2つの作品を通して、大奥に対してどんな印象をお持ちですか?
冨永 豪華絢爛で、華やかだけれど、ある意味“牢獄”のような……。時代の妙というか、非常に不思議な世界ですよね。
――一視聴者としては、面白く拝見しつつも、「いつの時代も女って大変だな」と思ったりもしました。
冨永 そうですよね。女性をまるで子どもを産む機械のように扱っていた部分もありますし。相当大変だったはずです。でも、制限があるなかでも、精いっぱい楽しんだ女性たちの生きざまはすばらしいなと思います。
――もし、冨永さんが大奥にいたらどうなっていたと思われますか?
冨永 うーん……速攻で外に出るか、上り詰めるか(笑)。私は将軍の妻を目指すタイプではないので、高岳のように大奥を取り仕切る立場を目指していたと思います。
――二極なんですね(笑)。では、大奥に仕える女性たちに対してどんな印象をお持ちですか?
冨永 大奥のなかでは「将軍の子どもを産む」人は限られていますから、そのほかの仕事をしている人の方が多かったわけです。そう考えると、ドラマなどで描かれるような“側室たちのライバル関係”ばかりでもないのかな、と。なかには江戸城を、幕府を支えていることに生きがいを見出していた女性も多かったのではないでしょうか。
――2つの作品で「大奥」に携われる機会はなかなかないですよね。NHKドラマ10『大奥』では男女逆転という、これまでにない描かれ方が注目を集めました。
冨永 まず、『大奥』では、もともと植え付けられていた「将軍=男性」という認識をガラッと変えて、「吉宗=女なんだ」と理解するのが大変でした。
いったん逆転した状態で理解してしまったものですから、『べらぼう』に入ったら、通常の設定でしょう。初めの内は頭のなかがごちゃごちゃになってしまいました(笑)。いまだに「絵島(大奥の御年寄のひとり)」は私のなかでは男性なので、「自分のなかで男性ということは、実際は女性か」と考えてしまうんです(笑)。
――『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で演じられている高岳は、大奥の最高責任者ともいうべき役割ですが、どのように役作りをされたんでしょうか?
冨永 監督をはじめ、スタッフの皆さんとやりとりを重ねながら、手探りで作り上げていきました。でも比較的、自由にふくらませていくイメージです。
とくに印象に残っているのは、ワインを飲むシーン。現代とは違ってとても小さいグラスを持ってくるくる回すシーンがあったんです。私はどんな風にワイングラスを回すかを知っていますが、くるくる回すことを初めて知った高岳は、どうやって回すんだろう? とあれこれ考えました。
そもそも江戸時代や「徳川家」について、学校で勉強したけれどなかなか頭に入ってこなかった……という人が多いのではないでしょうか。私自身がまさにそうで、ドラマ出演をきっかけに改めて勉強しはじめたタイプ。ドラマを観てから展覧会をご覧いただくと、より歴史が理解できて楽しめると思います。
2025.08.09(土)
文=河西みのり
撮影=平松市聖