この記事の連載
中島美鈴さんインタビュー前篇
中島美鈴さんインタビュー後篇
「本当の決断力」をつけるために

――「選択肢を減らす勇気」や「完全を求めすぎないこと」など、日常の買い物や片づけに応用できる話も参考になりました。
中島 ありがとうございます。本書の第2部実践編では、「洗濯機を買い替えたいのに、いつまでも決められない」という事例をご紹介しましたが、これはステップ2の「情報収集」でつまずくケースです。
全部の機種を比較し、クチコミも読み尽くして、それでも「この価格ならほかにもあるかもしれない」と無限に選択肢を増やす方には「自分軸で決められない」という課題もあります。
「もじせか」をうまく活用できるようになると、選択肢を自分で絞り、優先順位を間違えないようになれるので、モヤモヤが減ると思います。
――「決める力」がつくことで、自分にも自信がもてそうですね。
中島 そう思います。日常生活は、今日何を着るか、どのタスクを先にやるか、ランチに何を食べるかなど、小さな意思決定の連続です。でも、転職や結婚、家電の購入など、大きな決断になると急に自信がなくなってしまう方が多くなります。
日常の小さな選択から「私はこういう価値観で動いているのだな」と気づいていく。その繰り返しが、いざというときの「本当の決断力」につながっていくので、ぜひ習慣づけていただきたいです。
――中島さんも、ここにたどり着くまでに紆余曲折があったのですか?
中島 失敗だらけです。一番大きな失敗は、直感でマンションを即買いしてしまったことです……。リスクを深く考えず、「ま、いいか!」と、見学に行ったその日に中古のマンションを買ってしまいました。タイプ(5)「即決しすぎて失敗」の典型ともいえますよね。
いまのところ大きな不具合はありませんが、一生住み続けることは難しそうです。近年のマンション価格高騰を考えると、結果的に決して悪いばかりの買い物ではありませんでしたが、もうちょっと熟考して、終の棲家となる家を購入してもよかった……と猛省しています。
本書で紹介するキャラクターやエピソードには、そんな私をはじめ、制作チームの悩みや失敗も入れ込んでいます。読者それぞれに近いキャラクターも見つかると思いますので、ぜひご自身に重ねながら読み進め、お役立ていただければ嬉しいです。
》【後篇】進学、就職・転職、結婚にも役立つ! 臨床心理士に聞く「後悔のない意思決定の仕方」とは
中島美鈴(なかしま・みすず)
1978年福岡県生まれ、臨床心理士。公認心理師。心理学博士(九州大学)。専門は時間管理とADHDの認知行動療法。
肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部などの勤務を経て、現在は中島心理相談所所長。ほかに、九州大学大学院人間環境学府にて学術協力研究員および独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター臨床研究部非常勤研究員を務める。著書には『ADHDタイプの大人のための時間管理ワークブック』(星和書店)、『ADHD脳で困ってる私がしあわせになる方法』『マンガでわかる精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください』『マンガで成功 自分の時間をとりもどす 時間管理大全』(以上主婦の友社)、『脱ダラダラ習慣!1日3分やめるノート』(すばる舎)など、本書を含めて全55冊
がある。時間管理の専門家としてNHK「あさイチ」への出演や、朝日新聞でのコラム連載やセミナー講師など、多方面で活躍している。

マンガで挑戦とっちらかった頭の中を整理して決められる人になる
定価 1,870円(税込)
主婦の友社
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)

2025.07.30(水)
文=相澤洋美
撮影=平松市聖