Magnificent View #253
ファテープル・シークリー(インド)

(C) Robert Harding Images / Masterfile / amanaimages

 ファテープル・シークリー。一度聞いただけではとても覚えられそうにないこの名前は、「勝利の都シークリー」という意味を持つ。

 その名の通り、この地はかつて帝都としてにぎわった。ただし、14年という短い間のみ。

 1571年、ムガール帝国の第3代皇帝アクバルは、長らく待ちわびた男児を得る。それを予言したのが、イスラム教の聖者サリーム・チシュティー。世継ぎの誕生を祝し、この聖者が住まいを構えていた場所に、新たな都が一から築かれることになった。

 赤い砂岩を材に採った建築物は、ヒンドゥーとイスラムの様式が見事に融け合っている。そんな中、唯一白い大理石で造られたサリーム・チシュティー廟は、鮮烈な印象を与えてくれることだろう。

 結局、水不足と猛暑に耐えきれず、1588年にはこの都は打ち棄てられてしまう。うたかたにも似たその夢の跡は、世界遺産にも登録された。

Column

今日の絶景

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2014.06.10(火)