「何もない時間」も含めて現実として再現
──“夕陽から夕陽まで”だから24時間なのですね。
ルーナソン監督 はい。私にとっては、人々がその時間を感じられるような感情を伝えることも重要でした。
時間の感じ方はその時の状況や感情によって違います。たとえば楽しい時間は短く感じ、つらい時間は長く感じるでしょう。本作では、24時間という短い時間の中で、恋人と過ごす幸せな時間から、永遠に恋人を失う絶望の感情まですべての感情を入れ込みたかった。
もちろん、そのなかには何も起こらない時間も入れています。通常、こうした「何もない時間」は映画ではカットしてしまいますが、それも含めて現実として再現し、観客に伝わるかどうか試してみたかったのです。
冒頭でもお話しした通り、私の映画はすべて個人的な経験を記した「旅」であり、自分自身を映す鏡のようなものだと思っています。映画を作ることで、自分自身と、自分の人生をよりよく理解しようとしている。そのほんの一部でも観客に見せられたらいいし、観てくれた人が自分自身の人生をそこに投影し、何か考えるきっかけになればいいなと思っています。

アイスランドの白夜の夏を舞台にした意味
──アイスランドの白夜の夏が舞台となっているのも大きな意味があるように感じました。
ルーナソン監督 アイスランドはかなり北緯が高いので、冬は1日に2時間くらいしか太陽が昇りません。でも夏は逆に、「白夜」と呼ばれる、太陽が1日沈まない日もあります。
物語を夏の始まりに設定したのは、季節の変わり目と、若者たちの人生の「変わり目」を示唆したからです。太陽が沈まない夏に咲き始める木々、成長する草は、若者たちのこれから広がる未来、若いエネルギー、人生のはじまりを象徴するのにちょうどいいと思いました。
作品作りに関わる人たちは、「ファミリー」
──音楽や映像の美しさも非常に印象的でした。
ルーナソン監督 ありがとう。今作では、すばらしいクリエイティブ・チームが集まってくれました。私より優れた偉大なアーティスト、偉大な音楽家と一緒に作品を作れたことは、私にとって非常に幸運でした。
作品作りに関わる人たちは、いわば「ファミリー」です。対話を重ねながら作品を作っていったことで、いちばん弱いところも、うまくバランスをとって作品のなかに入れ込むことができたと思っています。

2025.06.23(月)
文=相澤洋美