この記事の連載

自分らしい生き方、または働き方とは?

――本作は「自分は果たして誰なのか」という自己探求から始まり、“自分らしく生きる”ことの難しさと大切さ、“自分らしく生きる自分”を受け入れることの重要さを描いています。お二人の自分らしい生き方、または働き方とは?

キム・ゴウン 「笑いながら楽しく働く」かな。決してのほほんとしているという意味ではありません。激しく、情熱を持って、でも笑顔を忘れずに仕事をする。それが、私にとって自然で、自分らしい働き方です。

 私は現場で働く全ての人に、それぞれの立場でやりがいを感じてほしいですし、一人ひとりに「自分はこの仲間の一員であり、ここにいる意味がある」と思いながら、仕事に取り組んでほしいと思っています。だからこそ、一緒に働く仲間全員が、お互いに尊重されていると感じられるような現場作りを心掛けています。

ノ・サンヒョン 僕は……よくわからないなあ。

――ゴウンさん、撮影現場でのサンヒョンさんはどんな姿でしたか?

キム・ゴウン 激しく、情熱を持って、全力で取り組んでいました。

ノ・サンヒョン ありがとうございます。僕はただ、自分がやるべきことに最善を尽くしてやり遂げたい、その一心で仕事に向き合っているだけなんです。時には自分を追い詰めてしまうこともあるけど、それが僕らしさなのかもしれません。

 僕は、どちらかというと結果重視の傾向が強い方なんです。育ってきた環境も競争の連続で、結果を出すことが重要でした。その過程で学んだ姿勢だと思うのですが、最近は「これは間違っているんじゃないか」と感じることがあるんです。激しさや本気の姿勢は大切だけれども、時々は力を抜くことや、無理に上手くやろうとしないことも必要なのではないか、と。

――最後に。「自分らしく生きる」ために必要なものは何だと思いますか?

キム・ゴウン 自分自身にニンジン(ご褒美)と鞭を適切に与えること?(笑)。俳優は自分を客観視するのが難しい職業です。でも、客観的に見る目が最も必要な職業だとも思います。客観的な目で自分を見つめ、いいところは「よくやった」と自分を褒めて、宥め、明らかに正さなければいけないところは、鞭を打って正す。そうやってニンジンと鞭を上手く与えながら、一日一日を生きていくことが大切なのではないでしょうか。

ノ・サンヒョン 僕も同じ考えです。「僕」という一人称だけでなく、三人称の目でも自分を見つめ、対話しながら生きることが重要だと思います。

――ちなみに、お二人にとっての“ニンジン”はなんでしょう?

ノ・サンヒョン 自分への褒め言葉ですね。僕は自分に厳しいところがあって、自分を非難しがちなんです。だから、意識的に褒めたり、「大丈夫だ」と言たりすることで自分らしさを取り戻すようにしています。

キム・ゴウン 「何もしない日」かな。ゴロゴロして、ひたすら携帯ゲームをしたり、テレビを観たり……。誰かが見たら「人はあんなに怠惰に生きられるものなのか」と思うほど、生産性のあることはな~んにもしない。心と体をデトックスして、パワーチャージする。そんな日があってもいいですよね?

『ラブ・イン・ザ・ビックシティ』

映画『破墓 パミョ』やドラマ「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」で人気のキム・ゴウンと、ドラマ「Pachinko パチンコ」で注目された新鋭俳優ノ・サンヒョン共演。世界三大文学賞の一つ、国際ブッカー賞にノミネートされたパク・サンヨンのベストセラー小説を原作に、イ・オニ監督がメガホンをとる。

ストーリー
他人の目を気にせず自由奔放に生きるジェヒとゲイであることを隠して生きるフンス。大学の同期として知り合った二人は、ルームシェアをしながら友情を深めていく。

監督:イ・オニ
出演:キム・ゴウン、ノ・サンヒョン
原作:小説『大都会の愛し方』より「ジェヒ」(パク・サンヨン著、オ・ヨンア訳/亜紀書房)
提供:KDDI
配給:日活/KDDI

2024年/韓国映画/韓国語/原題:대도시의 사랑법(英題:Love in the Big City)
1時間58分/カラー/1.85:1/5.1ch/字幕翻訳:本田恵子

キム・ゴウン

1991年7月2日生まれ。『ウンギョ 青い蜜』(12)でデビュー。ドラマ「トッケビ ~君がくれた愛しい日々~」(16)では社会現象を巻き起こした。その他の出演作に『その怪物』(14)、『コインロッカーの女』(15)、『ユ・ヨルの音楽アルバム』(19)「ザ・キング:永遠の君主」(20)、「ユミの細胞たち」(21)、「シスターズ」(22)などがある。本作では、2024年の「今年の女性映画人賞」を受賞。公開を控えている作品に、主演作「ウンジュンとサンヨン」、チョン・ドヨン主演、「愛の不時着」のイ・ジョンヒョ監督が手掛ける「告白の代価(仮題)」、Netflixの新シリーズ2作品がある。


ノ・サンヒョン

1990年7月19日生まれ。2010年、アメリカでの留学中に韓国でモデル活動をスタート。Netflixドラマ「センス8」(15)で俳優デビュー。Apple TV+の「Pachinko パチンコ」(シーズン1(22)、シーズン2(24))で牧師イサク役を熱演し、国際的な知名度を高める。その他の出演作に、ドラマ「カーテンコール」(22)、「エージェントなお仕事」(22)、「サウンドトラック #2」(23)などがある。本作では、「韓国映画製作家協会賞」新人俳優賞、「青龍映画賞」新人俳優賞を受賞。

← この連載をはじめから読む

2025.06.19(木)
文=酒井美絵子
撮影=平松市聖