カンヌ国際映画祭で注目 鈴木唯(12)は何者?

2022年に公開された映画『PLAN 75』を覚えているだろうか? 日本が突き進む超高齢化社会を背景に「75歳以上が生死を選択し、国が保証・支援する制度が施行された世界」を描く社会派作品だ。世界三大映画祭の一つ・カンヌ国際映画祭(第75回)の「ある視点」部門では新人賞にあたるカメラ・ドール特別表彰に輝き、米アカデミー賞の国際長編映画部門における日本代表に選出されるなど国内外で高く評価された。
同作を手掛けた早川千絵監督による待望の新作映画『ルノワール』が、6月20日より劇場公開。1980年代の日本を舞台に、11歳の少女が死という事象と向き合うひと夏の物語だ。

本作は第78回カンヌ国際映画祭でワールドプレミアされると、約6分間に及ぶスタンディングオベーションを巻き起こした。と同時に、主演を務めた新星・鈴木唯が映画祭主催の「注目すべき10人の才能」に選出されるなど、一気に「世界に見つかった」存在に。彼女はいったい何者なのか? 本人のインタビューと共に紐解いていきたい。
ユニクロやパナソニックのCMで話題を集め、2年でカンヌへ

鈴木が映画初出演にして初主演を飾ったのは、2023年製作の『ふれる』。こちらは監督を務めた髙田恭輔の大学の卒業制作で、ト書き(動きの指示)のみの脚本から俳優とともに対話を繰り返しながら作り上げたもの。この異色作で輝きを放った鈴木は「演技をしたときにぞわぞわとして、もっとこの快感を味わいたいと感じました」と演技の道に進むことを決め、オダギリジョーや河合優実ら実力派を擁する芸能事務所「鈍牛倶楽部」に所属。ユニクロやパナソニックのCMに出演し、2025年3月に公開された瀬々敬久監督作『少年と犬』では西野七瀬と重要なシーンで共演。そしてわずか2年でカンヌの地にまで到達してしまった。

彼女をオーディションで主演に抜てきした早川監督は「主人公・フキに出会えるまで何百人もオーディションする覚悟だったが、最初に唯ちゃんに出会えて“彼女だ”と確信した」と語っている。本人は「私みたいな人がこんなにもすごい監督さんの作品に出られると思っておらず、受からないだろうなと思っていたため驚きを隠せませんでした。あっけらかんとしているうちに撮影が始まり、気づいたらカンヌにまで行ってしまって本当にあっという間の出来事でした」と謙遜するが、彼女がただ“持っている”だけの存在でないことは、本編を観れば一目瞭然だ。
2025.06.20(金)
文=SYO
撮影=榎本麻美