〈体操女子で57年ぶりの五輪メダル、子役として活動したことも…村上茉愛(28)が引退後に指導者になった“切実な理由”〉から続く
東京五輪(2021年)で日本の女子選手として初めて個人種目でメダルを獲得した、体操の村上茉愛さん(28)。現在は指導者として、後進の育成に尽力している。
思春期の体型の変化や生理、露出のある衣装への性的な視線など、女性アスリートが直面する問題について、村上さんが思うこととは。(全3回の2回目/続きを読む)

◆◆◆
――体操女子の環境についても聞かせてください。男子と比べると、「選手寿命が短い」とも言われていますよね。
村上茉愛さん(以下、村上) 現状では、ピークは高校生と言われていますね。でも、私が東京五輪で銅メダルを獲ったのは24歳の時でした。練習の質、気持ち次第でまだまだ伸びるはずなんです。私の時代より今の子たちの方が実力はあるのに、諦めてしまうのはもったいないと思っています。

女性アスリートをとりまく思春期の悩み
――思春期は体型の変化などで苦しまれるアスリートも多いですよね。
村上 10代の頃はホルモンバランスの関係で食べないのに太ったり、ウエイトトレーニングしても筋肉がつかなかったりと、自分で自分の体をコントロールするのがすごく難しい。思うようなパフォーマンスができず、メンタルも安定しないので、限界を感じてやめちゃう人が多い。私も、かなりつらい時期でしたから、気持ちはよく分かります。
――特に体操は自分の体一つで向き合う競技です。
村上 体の変化がそのまま結果につながりますから、ナーバスになるのは当然です。ただ、クラブチームなどでは指導者は男性が多いので、そこにはあまり触れてこなかったんだと思います。

過激なダイエットは絶対に避けてほしい
――体重や体脂肪もかなり厳しく管理されているイメージがあります。
村上 クラブによっては毎日体重を計るところもありますけど、私は指導者としては、食事制限をしたくないですね。むしろ食べたいものは食べて欲しい。もちろん、体に必要な要素を摂った上で、ではありますが。
食事制限をすると筋肉もつかなくなるので、当然ケガに繋がります。だから引退せざるを得ない。私はこの根本から見直さなければならないと思っています。
体操選手というより、まずは自分の体を大事にしてほしい。無理はせず健康な体を維持してほしい。だから過激なダイエットは絶対に避けてほしい。
2025.05.30(金)
文=吉井妙子