リム・カーワイ監督をキュレーターに迎えた「台湾文化センター 台湾映画上映会」が今年もスタート。第1回が5月17日、日大文理学部オーバル・ホール(東京・世田谷区)で開かれた。生憎の風雨にもかかわらず、多くの台湾映画ファンが足を運んだ。
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この日は2023年製作のオムニバス映画『タイペイ、アイラブユー』(原題:愛情城事)が日本で初上映された。上映後のトークイベントには、本作のプロデューサーであるエイミー・マーさんがオンラインで、会場には映画批評家の相田冬二氏が登壇した。

『タイペイ、アイラブユー』
大都市・台北の街で生きる人々の様々な愛の形を、10話のオムニバスで綴った。路上で花を売る祖父と孫娘、一緒にコロナ・ワクチン接種にでかけた女性と義理の父親、ロト(宝くじ)をめぐって偶然出会った男2人の奇妙な交流、会った覚えがない女性に親しげに話しかけられた男……。日本で知られたスター俳優も多く出演し、台湾・香港・マレーシア・ブータン・フランスなど多彩な監督たちが演出したのも注目だ。金馬奨2023クロージング作品。
2023年/115分/台湾 原題:愛情城事/英題:Tales of Taipei
監督:イン・チェンハオ、リウ・チュエンフイ、ノリス・ウォン、レミー・ホアン他/出演:チャン・チェン、チェン・シューファン、カリーナ・ラム、サミー・チェン、ウー・バイ他/©Kurouma Studios
監督は5人が台湾人、5人が他地域、5人が女性、5人が男性
オンラインで登場した本作のプロデューサーであるエイミー・マーさんは、この映画をつくった経緯をこう語った。
エイミー・マー(以下、マー)「この映画のもともとのタイトルは『愛情城事』と言います。まず“愛”は様々な愛を描いているということ。そして“情”は、情には愛情もあれば友情もあるし、家族の愛情や知らない人との出会いなども意味しています。“城”は都市、最後の“事”は出来事という意味です。つまり、愛と情について様々なことが都市で起きているというタイトルですね。

私がどうしてこの映画を作ろうと思ったかというと、コロナ禍を経験した後で、これから映画を作るとすると、派手なアクションとかホラーとか、そういったものではないと感じたんです。そこで、アジアなど様々な国や地域から若手の監督たちを集めて、人々の心の触れ合いを描いてもらいました。いろいろな人々の愛情をめぐる物語を通じて、観る人が何か力を感じてもらえたらという風に思ったのです。

そして、必ずしも意図したわけではないのですが、10人の監督は5人が台湾の人で、5人は他の地域の人になり、そして5人が女性で5人は男性となりました。
それぞれ文化的な背景が違う、様々な監督たちがそれぞれの視点から愛について描くという形になっています」
2025.05.26(月)
文=週刊文春CINEMAオンライン編集部