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僕は猫が好きなのか?「イトと幸子」が好きなのか?

――今すごくお忙しいと思うんですけど、触れ合う時間に変化はありますか?

 確かにちょっと減ってます。仕事と仕事が詰まっていると、家に帰った瞬間に寝るための準備を始めないと翌日の仕事までの睡眠時間が取れないので、ほとんど撫でてあげられなくて。自宅にいる時間が短くても、僕のあとをずっとついてくるので、寝る前には撫でたりするんですけど、イトとしてはちょっと不満が溜まっているかもしれない。申し訳ないです。

 寝る時は一緒じゃないんですよ。僕、いびきがすごくうるさいみたいで。だから、さっき話した猫用こたつで寝ています。

――幸子ちゃんとイトちゃんを通して猫に魅了されたわけですが、ケムリさんが思う猫の良さは?

 いい意味で「人間にとって都合がいい」んじゃないですかね? 猫が人間に興味のない瞬間があるところが、現代人に合っているのかもしれないですね。まぁ、うちの猫の場合、そんなことはないんですけどね。また、僕だけの意見を伝えるなら、猫の歩いているところを見るのが好きです。動物が好きだからなんですけど、ネコ科らしい前脚の筋肉とか動きがかっこよくて。アビシニアンとかの短毛種とか、歩いてる姿が本当にかっこいいんだよなぁ。トラとかと脚の作りが変わらないし、何かを狙っている時の顔もちゃんと怖くて好きです。

――猫は犬に比べると野生味が強いほうですよね。

 そう、そこがいいなと思います。そんなふうに、家ではイトをずっと見ています。肉球とかも触ったりして。僕、抱っこが上手いからなのかもしれないんですけど、イトは抱っこをまったく嫌がらないんです。昔はちゅ~るをあげながら頑張って爪切りしてたんですけど、抱っこしながら爪が切れることもわかりました。特徴として、抱っこが嫌な時は僕の顔を見てくるんです。けど、嫌じゃない時は普通にどこか見たりして過ごしていて。もちろん、持ち方で腰に負担をかけてはいけないので、長時間の抱っこはしないようにしてますけどね。

――動物全般が好きだそうですが、幸子ちゃんとイトちゃん以外の猫もかわいいと思いますか?

 あぁ……今聞かれてみて、イトと幸子だけ溺愛してると気づきました。

 ほかの猫も動物としては好きですけど、野良猫とかは「大丈夫かな」とか心配のほうが優っちゃいます。生き物だと虫もすごく好きなんですけど、かわいいではないしなぁ。この気持ち、言葉にはできないんですけど、僕の虫に関しての好意は、「おぉ……!」って感じなんです。こんなに美しいものが自然に生み出されているんだ、という圧倒というか。高校生のときにはじめてタマムシを見たときの感動は忘れられない。これが生き物を好きな理由で、猫……イトと幸子をかわいがる理由とは違うのかもしれないですね。

 ただ、これは悲しいことなんですけどね? 幸子と一緒に暮らしていた頃は、幸子が世界でいちばんかわいいと思っていたんです。けど、イトと暮らし始めてから、イトが世界でいちばんかわいくなってしまって、幸子って変な顔をしてるなと思うようになったんです。だから、僕は1匹しか愛せないのかもしれない。ただ、幸子も最近、寝る時間が増えてきたとか高いところにあまり登らなくなっていると母から聞いたので、会いに行かないとなとは思ってます。

――では、イトちゃんはケムリさんにとってどんな存在ですか?

 先ほど子供と言いましたけど、我が子というより孫に近いのかもしれない。自分の子供だったら甘やかしすぎてはいけないけれど、孫って甘やかしていいじゃないですか。猫を健康面以外で甘やかしちゃいけない理由なんてないので、孫ですね。これからもイトの幸せを願っています。

――ちなみに、幸子ちゃんはどうですか。

 幸子は……きょうだいに近いかもしれない。構造上、実家にいて、僕がいて姉がいて、幸子は完全に親に養われているので、実家を出てないきょうだいです(笑)。

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松井ケムリ(まつい・けむり)

1993年5月29日生まれ、神奈川県出身。慶應義塾大学のお笑いサークル「お笑い道場O-keis」で高比良くるまと令和ロマン(当時のコンビ名は魔人無骨)を結成。NSC東京校23期を首席で卒業後、2023年と2024年に「M-1グランプリ」で史上初の連覇を達成。2024年7月には「第45回ABCお笑いグランプリ」でも優勝。
X @smoke_matsui
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Column

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2025.06.06(金)
文=高本亜紀
撮影=細田 忠
写真=松井ケムリ