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イギリス留学も“ちび”の成功体験の延長線上なんです

――この4月から、イギリスに語学留学に行かれるそうですね。留学というと大きな決断のようにも感じますが、行こうと思ったきっかけは?

 それも、ちびの成功体験の延長に、留学があっただけなんです。オーディションを受けることも一緒。ちびちびの成功体験の先にあるものだから、突然の大きな決断だとは自分の中ではまったく思っていなくて。 希望に満ち溢れた留学っていうより、家で英語の勉強するのだるすぎ、行っちゃおう! みたいな感じから始まって、留学センターに行ったらすぐに行けるのがロンドンだったので決めました。

 美術が好きだから、美術館がたくさんあるヨーロッパは楽しいだろうし、道端でおもしろいものも見つかるだろうから散歩も楽しいじゃないですか。「楽しい地面、いっぱい見つけるぞ!」と思っています。

――海外の映画祭にもここ数年行かれていましたね。

 ドイツとオーストリアに行きました。でも、仕事のために英語を習得したいっていうわけではなくて。仕事に活かすんだったらどちらかというと韓国語の方がやりたいです。英語は自分のための勉強って感じです。

――家でコツコツ勉強するより、まずは行ってみようとなったんですね。

 車の免許を3年前ぐらいに取ったんですけど、本当に大変だったんです。私、何かしながら別のことをするのができないんですよ。音楽を聴きながら駅を歩くこともできないし、仕事しながら勉強することもできないんです。だから教習所に通ってたときは全然うまくいかなくて。免許合宿で缶詰になって朝から晩までずっと車だけに向き合ってやっと受かったんです。ミッション終了! みたいに、やり遂げることで自由が広がるわけじゃないですか。それがすごくおもしろいなと思って。

 これまで勉強と言われるものをまったくしてこなかったんですけど、免許合宿を経て「私は一つのことに集中して頑張ったら何かをゲットできる人間なんだ!」って思ったんです(笑)。だから英語の勉強も「これだ! 向き合うしかない!」と思って、すぐに留学を決めました。学生時代はあまりいい学生じゃなかったと思うし、英語の授業も放棄していました。当時の自分のいた環境では、留学とか大学進学なんて考えられなかったから、自分の稼いだお金で今改めて自分を教育することが、大人のお金の使い方としてもいいかなと思って。元を取るくらいガリ勉になろうと思います(笑)。

――俳優の話も留学の話も、実際に飛び込んでみることを大事にしているという意味で共通しているなと思います。

 そうですね。自分が感覚を大事にしていることをわかっているから、考えるよりも行った方がいいタイプだなって。

 あとは、違う国で生活することに興味があって。日本で生活していて、フェミニズムのことや政治のことなど気になることがいっぱいあるけど、違う国で暮らしている同世代はどういう風に見ているんだろうと思うんです。

 韓国に2ヶ月ぐらい仕事で行ったときにおもしろい発見がいっぱいあって。生活するからこそ感じることもあったし、自分が日本人の30歳の女だという自覚も芽生えたんです。日本にいるとなかなか気づけない、いま自分が気づかずに持っているものについて自覚すると、世界の見え方も変わるように思えて。

2025.05.19(月)
文=竹中万季
写真=佐藤 亘