私には感覚に身を委ねるスタイルが合っている気がします

――本来の自分自身や生活を大切にしながら、自然と動いていく感じがありますよね。
そうですね。私、頭脳タイプではなくて、どちらかというと感覚タイプで。だからそれでいけたんだろうと思うし、いまのところこの戦い方がすごくしっくりきているなと思います。
――はっきりと言語化されているわけではなかったとしても、こっちの方がおもしろそうだなという感覚を育てていらっしゃるように感じます。
何かすごく大きなことに向かって決断していっているというより、先々のことまで決められないんですよね(笑)。だから、高校を卒業したときもニートでした。大きなことは決めないけれど、違うと思ったことは絶対に違うし、いいと思ったら絶対にいい、それしか信じていなくって。その成功体験が身体にあるから、迷いも悩みもないし、人に何かを相談することもほとんどないんです。だって、何かがあったとしても、やると決めたらやるしかないんだから。

――怖いなって思うことは?
怖がることも自分の人生の中であまりないですね、お化け以外は(笑)。自分が思ったことをすごく信じているんですよね。不安に感じたりしても「それはチャレンジしているってことなんだから貴重な経験になるんじゃない? 大丈夫だよ、私、頑張れ! いけー!」って弱い気持もしっかり受け止めてあげるようにしています。
――自分を信じたい気持ちはありながらも、つい本当の気持ちを押し殺して、こっちの道の方が安心できるんじゃないかとか、初めてだから怖いとか思ってしまうこともある気がします。奈衣瑠さんにもできないかもしれないと感じる瞬間はありますか?
自分は何ができなくて、何が苦手なのかをすごく認識してるんです。
例えば、細かいシステムを覚えたり、人が大量にいる流れの中で歩いたりすることができない。電車に乗ることもずっと苦手です。今でも現場に到着して「やっと着いた!」と泣くこともあって、去年は3回泣きました(笑)。大人数の波に乗ることが本当にできなくて、それはできないって認めているんですよ。
人が当たり前にできることができないという自覚があるからこそ、そのぶんできることは頑張ってやろう、楽しんでやろうって思っています。
2025.05.19(月)
文=竹中万季
写真=佐藤 亘