浅野 まぁそうですね……(笑)。10代の頃は「二兎追うもの一兎をも得ず」ということで、ちゃんと仕事をやっていきたいなら恋愛や結婚は考えるなと言われていました。例えばドラマで孤独な役をやっていても「この人は家に帰ったら旦那さんと子どもがいるんだよね」と思ったら白けてしまうからプライベートが見えてはいけないんだと刷り込まれてきましたから。いつからか交際宣言とかも増えてきて、びっくりしたのを覚えています。
――びっくり、という感じだったのですね。仕事のためにプライベートは隠すという時代は息苦しかったですか。
浅野 実はそれはそれでスリリングで楽しかったんですよね。いかにバレないようにするか、みんな考えていたと思います。私個人の人生にとってはすごく楽しい思い出ですね。

――生まれた時代が違えば生き方も違っていたと考えることもありますか?
浅野 違っていた気もしますけど、皆さんが必死でプライベートを隠す時代を見てきて、今はすごく自由にいろんなことをなさる皆さんを見て、両方を楽しんでいる私もいます。
「1人で生きていく気満々だったわけですね」「そうですよ(笑)」
――浅野さん自身が昔はできなかったけれど、今はできるようになったこともありますか。
浅野 結婚もそうでしょうし、昔は外で手をつないで歩くなんてあり得ないことでした。でも今は、たまに手を引いてもらうこともあります。段差があったりすると年齢的に危ないですし(笑)。
――かなり考え方や性格的にも変わってきているのですね。
浅野 それで言えば、物欲もずいぶん無くなりましたね。昔は本当にブランド物が大好きでした。バブルの好景気の頃は海外に連れて行ってもらえるお仕事も多かったものですから、自分が欲しいと思ったものは手に入れるまで気が済まないタイプでした。今でも気になる化粧品をネットストアで探し続けたりしちゃうこともあるんですけど、40歳くらいからはブランド物にほとんど興味がなくなりました。
――何かきっかけがあったのですか?
浅野 「大体のものは欲しければ自分で買える。だから私は1人で生きていける」という感覚になったことで満足したんだと思います。
――1人で生きていく気満々だったわけですね(笑)。

浅野 そうですよ(笑)。でも年をとったら話し方も変わったし、色々なことが変わるものだなと思います。関西人なので、もともとはすごい早口だったんですよ。
――ドラマでもまくし立てるセリフの印象はあります。
浅野 トレンディドラマの時代は早口のテンポの役が多かったんですが、舞台のお芝居などに出させてもらったときに「しゃべるのが速すぎる」と言われたこともありました。自分でも早口なのはわかっていたし、もしかするとカッとなって失敗するのも早口だからかもしれないと思って、少し考えてから相手が聞きやすいようにゆっくり話す練習をしたんです。
2025.05.11(日)
文=田幸和歌子