この記事の連載

ごはんの時間を豊かにする食器

――『ごはんが楽しみ』では、食器にフォーカスしたページも多いですね。

井田 実家や身内から食器を譲ってもらったことがきっかけになって、食器の幅が広がりました。かつて自分でそろえてきたものは白い食器が多かったんです。何にでも合うし、統一感があっていいと思っていて。でも、いろんな色や柄のある和食器の良さがわかるようになって、選択肢が広がりましたね。今はバラバラの小皿を食卓に並べるのが楽しいです。

山本 実家のお皿の良さ、今になってわかったりしますよね。大人になったから?

井田 ほんとに。あんなに興味がなかったのに。まさか和菓子用の漆や金箔使いのお皿をかわいいと思う日が来るなんて。

山本 私も大学生の頃とかは白っぽいカフェっぽい食器をそろえてましたっけ。今はサイトで買うことが多いんですけど……和食器はふるさと納税の返礼品で土地の焼き物を買うことも増えました。ちょっとお値段するけど、ふるさと納税だしいいかと。でも、器って値段だけじゃ語れないですよね。

井田 使ってみるまでわからないですね。

山本 間に合わせで買った器が、意外と何にでも合って大活躍したり。よく撮影で使うアルファベット柄の白いお皿、「どこで買ったんですか?」と聞かれるんですが、大学時代にセリアで100円で買ったものだったりして。もっと買っとけばよかった(笑)。

井田 そういうこともありますよね。長年、食器を増やすのがずっとこわかったんですよ。沼にハマったら終わりだと思って躊躇してたんですけど……一回手を出したら吹っ切れました(笑)。増えるばっかりですね。箸置きやカトラリーもその日の気分で選ぶ楽しみを知ってしまうと、なんて食べる時間が豊かになるんだろうと。

山本 たとえば服ってワンシーズンで着つぶしたりしますよね。1900円の服はすぐボロボロになるけど、食器って1900円出せばちょっといいやつ買えるじゃないですか。それに気づいたときにすごい買うようになってしまって(笑)。前は3000円のお皿なんて絶対無理と思ってたのに。考えたら、器だと4000~5000円で作家ものとかも買えちゃうわけですよ。服だと思えば安い買い物です。

井田 本当にその通り(笑)!

山本 とはいえ私、自分一人のときは軽くて割れない器を使っちゃうんですよ。目玉焼丼も黒いプラスチックの謎の丼に入れて食べてたりなんかして。『ごはんが楽しみ』を読んで「自分のためにいい食器買ったらいいやん」って思いましたね。毎回おいしいものを食べたいなと思ってますが、ちゃんとやるともっと楽しめるんだなぁって。励みになります。井田さんの本を読んでると「一人の、だれに見られてるわけでもない自分だけの時間」に楽しいことをするっていうのがすごくいいなぁと思うんですよ。

井田 ありがとうございます。パラパラながめるだけでワクワクしたり癒されるような本を作りたいと思っていたので。そんなふうに言っていただけてうれしいです!

山本 毎日をもっと楽しめるって教えてくれるような本だと思いました。友達にプレゼントしたくなる本です!

井田千秋(いだ・ちあき)

細やかで生活に寄り添った描写で愛されるイラストレーター・漫画家。著書に『家が好きな人』(実業之日本社)、『わたしの塗り絵BOOK 憧れのお店屋さん』(日本ヴォーグ社)など。児童書の挿絵に『へんくつさんのお茶会』(Gakken)、『ぼくのまつり縫い』シリーズ(偕成社)など。


山本ゆり(やまもと・ゆり)

料理コラムニスト。『syunkonカフェごはん』シリーズ(宝島社)が累計800万部。エッセイ本『おしゃべりな人見知り』(扶桑社)やブログ「含み笑いのカフェごはん『syunkon』」も人気。

ごはんが楽しみ

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文藝春秋
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ひたひたまで注いでコトコト煮詰めた話

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2025.05.24(土)
文=粟生こずえ