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『LAZARUS』はロック・ミュージックとして創られた歌

――デヴィッド・ボウイの遺志により、音楽パートはすべて英語で歌唱すると伺いました。

松岡 そうなんです。これも、めちゃくちゃ苦戦しています。

 第一に英語だから、というのはありますが、それ以上に苦戦しているのが発音です。デヴィッド・ボウイの歌はクイーンズ・イングリッシュなんですけど、マイケルが演じた舞台での歌は、ブロードウェイで鍛えあげた人のアメリカ英語。発音がまるで違うんです。もちろん、日本人の観客に聞いてもらうための英語の発音は、またまったく別物だと思うので、どこを目指すかはこれから白井さんと相談したいですね。

 ただ、どう歌うにしても、僕はマイケルよりボウイのことを上手に代弁できる自信はあります。それは、『LAZARUS』が、もともとミュージカルのための楽曲ではなく、ロック・ミュージックとして創られた歌だからです。

――ミュージシャンの松岡さんだからこそ表現できるものがある、とお考えなのですね。

松岡 そうです。純粋に「役者」ではない僕へのオファーには、オリジナルにはない魅力を引き出す期待も含まれているのではないかと思っています。

 本作の産みの親であるデヴィッド・ボウイがさまざまな「顔」をもっていたように、『LAZARUS』にはいろんな可能性があると思っています。先ほどもちょっとお話ししましたが、脚本と楽曲のアレンジがNGでありながら、オフブロードウェイ版とドイツ版ではまったく違う印象に仕上がっているのは世界中で知られていますし、じゃあこれをボウイの愛した日本でやるとどうなるの? というのは、実は世界から注目されているのではないかと思っています。

 そういう意味では、ロック・ミュージシャンである僕が演じるというのは面白い挑戦だと思いますし、大きなやりがいも感じています。

 デヴィッド・ボウイが表現したかったことを、彼が愛した日本に生まれた日本人として、そして、彼に憧れてロックを目指したミュージシャン・松岡充として表現できるのではないか。アーティスト人生30周年を迎えた今だからこそ、大きな発見があるのではないか、僕自身もそんな期待をしながら、舞台に挑戦していきたいと思っています。

ミュージカル『LAZARUS』

https://lazarus-stage.jp/

 

[主演]松岡 充
[音楽]デヴィッド・ボウイ
[脚本]デヴィッド・ボウイ & エンダ・ウォルシュ
[演出]白井 晃 [翻訳]小宮山智津子 [音楽監督]益田トッシュ
2025年5月31日(土)~6月14日(土)KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
2025年6月28日(土)~29日(日)フェスティバルホール

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2025.05.04(日)
文=相澤洋美
写真=鈴木七絵