キングオブコント2020で優勝したジャルジャル・福徳秀介の原作を実写化した『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』。冴えない日常を送る大学生・小西徹を萩原利久はどう演じたのか。大九明子監督への思いも語った。

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出演を決めた一番の理由は……?
──萩原さんが本作に出演を決めたのは、大九監督の作品だからという理由も大きかったそうですね。
萩原利久(以下、萩原) 大九監督とは以前もご一緒したことがあって、お名前を見た時点で、オファーをお受けする気持ちはかなり固まっていました。大九監督にはぶれない信頼感やリスペクトがあったので、怖れずに安心してチャレンジできるだろうという期待もありました。

──本当の自分をさらけ出すのが怖く、友達もほとんどいない小西をどう役作りされたのでしょうか。共感するところはありましたか?
萩原 僕はどちらかというとポジティブで合理的なので、答えの出ないことにいつまでも悩む小西の姿には、共感することはできません。でも、演じる上で大事なのは「共感できるかどうか」ではなく、「理解できるかどうか」だと思っています。「晴れている日でも傘をさす」というマイルールを固持していることや、親しい友人以外には心を閉ざしている姿などは、小西という人間を理解するのに非常に役立ちました。
役作りに関しては、普段は自分なりにキャラクターの軸となる部分をつくってから臨むのですが、小西はつかみどころがなく、軸を固めることが難しかったです。そこで今回は、共演の方や大九監督の反応を見ながら現場で役を固めていきました。僕を信頼してやらせてくれた大九監督には、感謝しています。

──本作にはかなりの長台詞もありました。どうやって覚えましたか。
萩原 あの分量になってくると、技術よりも気合いです。逆に気合い以外の方法があるなら教えてほしい(笑)。
バイト仲間のさっちゃんを演じた伊東蒼さんが、10分近く話し続けるシーンでは、さっちゃんの独白を聞いている僕も一緒に撮影しました。暗がりで、お互いの顔が見えるか見えないかという絶妙な距離感で、「相手の話を聞いているようで聞いていない」という演技をするのは大変でしたが、別撮りでは出せない温度感と空気が生み出せたと思っています。
2025.05.03(土)
文=相澤洋美