ロンシャン競馬場の芝生でも対局
午後からはブローニュの森の奥にあるロンシャン競馬場に足を伸ばした。噂に聞いていたとおりの美しい競馬場だった。観客は家族連れが多い。芝生の上に座って、持ち込んだワインを飲みながら、ピクニックのような気分で競馬観戦していた。芝生の緑は目に染みるようで、コースと観客席はとても近かった。
競馬場に着く前から買う馬券は決めていた。『碁盤斬り』にちなんで5番の馬を買うことにしていた。高尾さんが慣れない販売機と格闘しながら、5番の馬からの馬連を1枚ずつ全通り買ってくれた。
レースが始まった。最終コーナーを回って先頭に出たのは、果たして5番の馬であった。我々の前を疾走する5番の馬は、そのまま見事1着でゴールを駆け抜けてくれた。
競馬場では、もうひとつの楽しみがあった。私は道永さんと芝生の上で囲碁を打った。
碁石は高尾さんが日本から持って来てくれていた。碁盤は、コシノジュンコさんデザインのスカーフだった。今年の1月に開催されたペア碁とファッションショーをコラボしたイベントで配られたものだ。広げると碁盤になるので、今回のパリ旅行ではたいへん重宝した。
私と道永さんの棋力はまったくの互角。ロンシャン競馬場で囲碁を打った人など今までいただろうかと思いながら対局に熱中した。

帰りの空港で知った嬉しいニュースとは――
こうして楽しい旅を終えた。
帰国の日、シャルルドゴール空港で出国手続きをしていると、携帯にメールが入った。次週からも映画館チェーンで『碁盤斬り』が引き続き上映されることが決定し、チケット予約がリリースされたという報告だった。
最初から最後まで、今回の旅はなんと運がいいのだろうと話しながら、日本への帰路についた。
『碁盤斬り』は北米に加えて、韓国での配給も決定している。さらに交渉中の国もあるときく。次はどの国で上映されるのか。いまから楽しみでならない。

2025.04.30(水)
文=加藤正人