約3メートルの金剛力士立像が出迎える彫刻室

 次は、彫刻作品が展示されている1階11室へ。

 扉を入ってすぐの場所に設置された「金剛力士立像」の迫力ある姿に圧倒され、思わず息をのむ佐々木さん。実は、こちらの展示室は、2025年4月にリニューアルされたばかり。案内人の彫刻担当・増田政史さんが時代背景などを解説。

「こちらは平安時代後期、12世紀に造られた貴重な金剛力士立像です。“仁王”ともいいますね。もともとは滋賀県栗東市にあった蓮台寺に安置されていたのですが、昭和9年の室戸台風で門と像が倒壊しバラバラになってしまいました。昭和43年に国宝、重要文化財をはじめ仏像の修理を行う財団法人美術院に引き取られ、仮に組み立てた状態で保管していました。近年、約2年かけて修理され、縁あって2022年2月に当館が購入することになりました」(増田さん)

 平安時代に造られた金剛力士立像は力強さがありながらも、どこか穏やかさがあり、どっしりとした体型が特徴。また、通常、金剛力士立像は寺院の「仁王門」に安置されているため、正面から見ることしかできないが、ここでは背面が見られるのもポイントだ。「背面は丸みがあって、正面から見る印象と全く違いますね」(佐々木さん)

 展示室のリニューアルにあたり、ガラス製の展示ケースも刷新。透明度が高く、映り込みを極限まで抑えた特殊ガラスで作られており、LED照明を導入したことでスポットライトも細やかに設定できるようになったという。

「こちらの『菩薩立像(ぼさつりゅうぞう)』は目に水晶がはめ込まれていて、光を当てることできらりと光ります。これまでの展示ケースでは視覚的な演出が難しかったのですが、リニューアルしたことで水晶が輝く様子をご覧いただけるようになりました」(増田さん)

「本当だ、光っていますね。間にガラスがあることを感じさせないくらい、細部までリアルに観えて、より身近に感じます」(佐々木さん)

2025.05.01(木)
文=河西みのり
撮影=平松市聖