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白く浮かび上がるコンビニへ

 運はUさんを見捨てていなかったようで、間一髪のところで道の先で白い光を放つ小さなコンビニを見つけたのです。

「え、本当だ、助かったぁ~……」

「停めよう、停めよう!」

「トイレ、借りられるといいけど」

 そう言いながらUさんはレンタカーを店先の駐車場に停め、「ほら、早く行ってきな!」というFさんの言葉など届いていないかのように、慌てて外に飛び出していったそうです。

 店員さんに声をかけ、ペコペコと頭を下げながら店奥のトイレに駆け込んでいくUさんの後ろの姿を眺めていたFさん。

 彼女の姿が見えなくなったとき、ふとそのコンビニの違和感に気がつきました。

 何やら手書きのポスターのようなものが大きなガラス窓にいくつも貼られているのもそうでしたが、とりわけ気になったのはコンビニ名が記されているロゴでした。

「へー、珍しい」

 コンビニは全国展開をしている有名ブランドだったそうですが、そのロゴがひと昔前のものだったそうなのです。

 まるで平成初期に取り残されているかのような雰囲気に興味を惹かれたFさんは、じっと待っているのもなんだし、と、車を降りて店内をぶらつくことにしました。

後篇に続く)

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2025.05.03(土)
文=むくろ幽介