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ちょっと一杯にも、打ち合わせにも

 Vicoloは、レストランというよりは、バールというのが正しい感じ。イタリア食材も充実しているので、買い物がてら飲みに来る人もいるし、お茶しに来る人もいれば、軽く一杯の人もいる。はたまた、ブルスケッタや季節のスープをいただきつつ、軽くイタリアビールやワインを飲んでいく人も。常連さんばかりが行き来しているようですが、実は観光客の方も一人でふらっと来店しているのをよく見かけます。

 私はどちらかというと、長居する派。たまに2階で仕事をしながら、気付け的に白ワインを一杯。東京からいらっしゃる担当編集さんともここでの待ち合わせが多く、ランチどきならパスタとともにまた白ワインを一杯。パスタやおいしいオリーブオイルを調達しに来るときは、サクッとカウンターで一杯飲むという場合も。オリーブオイルが入荷したときにはオリーブオイルの味見をさせてもらいながらワインを飲んだりもしてきました。

 ここは、おいしくて楽しい場所。時折、湘南界隈の方が2階で味噌仕込みの会をしたり、ストレッチの会をしていたり、ときには画家の方の展示も。お店が、店名の“Vicolo”ではなくて“真智子の店”と通称されるのがよーくわかる、皆に愛される真智子さん。たとえ何も話さなくても、何も聞かずにそっとしておいてくれる感じもまたいいのです。

 というわけで、買い物帰りに、打ち合わせのときに、ワークショップのときに、とついつい小路に足を踏み入れてしまう私。ちなみにVicoloとはイタリア語で“小路”のこと。今さらながら伺ってなるほど~となりました。

 「人生って流れるように決まっていきますよね。この物件にたどり着いたのも友人を介してたまたまだったし」と、日々をゆるやかに受け止める真智子さん。そういうあなただからこそ、人は流れ流れてここに集まり、ぐるーっと何周もしながら皆がいい流れをつくっているんでしょうね~。私も末長く、その流れに乗り、ぐるぐるさせてください。

 鎌倉にひとりでぶらっとおいでになったあなたもぜひ、この流れにのりにいらしてくださいな。きっとカウンターで横になった誰かが話しかけてくれると思います。

Vicolo(ヴィコロ)

所在地 神奈川県鎌倉市御成町10-7
電話番号 0467-95-9049
営業時間 10:00~21:00
定休日 月曜(祝日の場合は火曜)
Instagram @vicolo_kamakura

赤澤かおり(あかざわ・かおり)

料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)、編著に「いざ、豊島屋」(KADOKAWA刊)。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny

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Column

赤澤かおりの鎌倉ひとり飲み

鎌倉で暮らしながら、料理編集者として飛び回る毎日を送る、赤澤かおりさん。どんなに忙しくても赤澤さんが元気いっぱいなのは、地元・鎌倉でお酒を飲む時間。このシリーズでは女性のひとり旅も多い鎌倉で、「ひとり飲み」に優しいお店をご紹介します!

2025.04.11(金)
文=赤澤かおり
写真=榎本麻美