日本酒の伝統技術で造られる大人気の純国産「虎マッコリ」誕生秘話とは?

 2020年頃から第四次と言われる韓流ブームが続いています。韓国グルメの人気もブームを通り越してすっかり定着している感があります。マッコリ、焼酎(ソジュ)といった韓国の伝統酒もアルコールの選択肢に自然にインリスト。

 伝統製法に敬意を表しながら、日本人に好まれる純国産、辛口のマッコリ「虎マッコリ」を造った10代目蔵元・社長の義裕さんに「虎マッコリ」を醸すこととなるきっかけや発売までの経緯などを伺いました。

「30年以上前、東京・上野の韓国料理店で初めて飲んで、シュワシュワッとした喉越しのよさと低アルコールでおいしいマッコリに感激しました。自分でもこんなお酒を造りたいなと、日本酒の持っている旨みを活かしながら低アルコールでおいしく飲めるお酒を造って商品化したいと思いました」(義裕さん)

 日本酒の製造技術があればすぐに造れるだろうと思っていた義裕さんですが、そう簡単なことではなかったそうです。

「韓国まで行って実際に造っているところを見学もしましたが、日本酒の造り方とはまったく違うんですよ。日本酒は単にアルコール度数を下げただけでは苦味と渋みが浮き出ておいしくないですし」(義裕さん)

 試行錯誤を続けるうちにマッコリ造りにも適した酵母菌がみつかり、国産の米を使用して甘みを極力抑えた辛口の純米生マッコリが完成。1990年から販売が開始されます。韓国料理店にはもっと甘くないと売れないと言われながら、頑なに日本酒らしい旨みを感じられる辛口を追い求めたのが「虎マッコリ」でした。その後に起きた韓流ブームも追い風となり、甘みを抑えた飲みやすい純国産のマッコリは大評判に。

 辛口の生マッコリ「虎マッコリ」は、仕込み水に阿武隈山系の伏流水を使い、米と麹の発酵した自然の甘みと爽やかで喉越しのいい微炭酸、ほどよい酸味でキレがよく、辛口なのに低アルコール。焼肉店や韓国料理店で供されることの多い「虎マッコリ」ですが、それ以外のさまざまな料理とも好相性で、酒ラバー&食いしん坊の心を掴んでいます。

 非加熱の生酒は温度管理が重要で、きちんと管理できる環境が必須の繊細な酒でもあるため、取引が確定している販売先に向けて造っているので、どこでも飲めるというわけにはいかず、幻のマッコリとも言われることも。

「少し大きめのグラスにたっぷりと注いで、ごくごくと喉越しを楽しんでいただきたい、そんなお酒です。」(義裕さん)

2025.01.25(土)
文=齊藤素子
写真=志水隆