この記事の連載
- かねひさ和哉インタビュ―【前篇】
- かねひさ和哉インタビュ―【後篇】
今の作風の原点は大学2年生のときに作った映像
――そこから映像制作を始められたきっかけも伺いたいです。
もともと小学生の頃から漫画を描くのがすごく好きで、自由帳などに漫画を描いてるような人間でした。しかし中高生の頃に一度絵で挫折を経験。大学ではアニメーションを作るのではなく、アニメの歴史を調べることに専念して学んでいました。その過程で、テレビの業界史であったり、あるいはテレビや映画がどのように発展してきたのかであったりを調べていくうちに、面白くなってきて。
大学2年生のときに体調を崩して休学したのですが、その際に時間ができたので、息抜きというか、リハビリがてら久しぶりに映像を作ってみようと思ったんです。昔の表現は歴史の勉強を通して自分の中に蓄積されてはいたので、それと現代のモチーフを組み合わせてみたら面白いんじゃないかと思って。そういう素朴な好奇心から最初は始まりました。
――それはもう今のかねひささんの表現そのものですね。
まさに直結するもので、さらに遡ると中学生の頃にアニメーションを趣味で作ったりはしていたんです。ただそれは今みたいに昭和のテイストを全面的に出したようなものではなく、純粋に自分の好きなように作っていました。昔の古典的な表現と現代のモチーフを組み合わせるという、今の原点になったのはこの大学2年生のときです。2022年の1月頃でしょうか。
――たとえば作品の一つ「もしも昭和30年代にiPhoneのCMが放送されていたら」のイメージソースはどこから持ってきているのでしょうか。
昭和30年代の時代設定にしているので、音楽に関してはコマーシャルソングの草分け的存在の作曲家・三木鶏郎さんの曲を聴きこんで、大体どういう歌詞の展開で、どういうふうに曲が成り立っているかを学びました。
映像は桃屋のアニメCMの三木のり平さんのキャラクター、あるいはサントリーのアンクルトリス(トリスウイスキーの広告キャラ/トリスおじさん)などを参考にしています。横浜にある放送ライブラリーに所蔵されているコマーシャルフィルムをぶっ通しで見て研究しました。
――発表した作品は反響が大きかったと思います。どの層に多く届き、どういうリアクションがありましたか?
だいたい20~30代の若い方からの反応が多かったです。一周回って新鮮な驚きというか、面白さを感じ取っていただけたことが窺えるようなコメントをよくいただきました。昨年からはクライアントワークが増えてきたので、届く層が広がってきています。
最近はレトロ要素よりもアニメーションやキャラクターとしての魅力に重点を置き始めている部分もあり、「はいよろこんで」のMVを作ってからは小学生からの人気が凄まじくて、ファンレターをいただくことも。昭和風だからといって、年配の方にしか受けていないというわけでは決してないと感じます。
2025.01.25(土)
文=綿貫大介
画像=かねひさ和哉