徒歩や自転車などゆっくり歩みをすすめながら、日本の豊かな自然や地域の歴史、文化を楽しむ新たな旅のスタイル「ジャパンエコトラック」。
アプリではさまざまな旅のルートを提案、マップの整備から各地の協力店の情報、地域の魅力発信まで、快適な旅をサポートしてくれます。
400以上のルートを提案するジャパンエコトラックですが、この12月より、現存する日本最古の道「山の辺の道」や修験道の聖地を歩く「吉野・黒滝トレッキング」など、奈良県南部の奥大和エリアのルートを新たに追加。
奥大和のディープな魅力を味わうべく、さっそく2つのルートを探訪してきました。
美しい吉野杉が見られる“奈良のへそ”から吉野山へ
今回は、黒滝村を起点に吉野山を経て吉野駅まで歩く総距離約14kmのクラシックルートへ。奈良の奥深い自然に囲まれたこの地は、山岳信仰や修験道との関わりが深く、それらにまつわる史跡も多く残されています。
スタートは近鉄吉野線「下市口」駅からバスで約40分の場所にある「道の駅 吉野路黒滝」から。
黒滝村は奈良県の中央に位置することから“奈良のへそ”と呼ばれています。
そして面積の約97%を森林が占める林業の盛んな地域でもあり、日本三大人工美林の一つとしても知られる「吉野杉」の美しい木立を見ることができます。
山のなかに入ると、目の前には一糸乱れず並ぶ美しい吉野の杉林が! どれも同じような太さで、びしっと背筋を伸ばして立つ吉野杉。その美しさの秘密は、「密植(通常より3~4倍もの密度で木を植える)」、「多間伐(何度も間伐を繰り返す)」、「長伐期(長期間育ててから伐採する)」という独自の育成方法にあります。
吉野杉は、1ヘクタール(甲子園球場のグラウンド程度)の広さに通常の3倍の数、約1万本もの苗木が植えられます。そうすることで、それぞれの木が太陽の光を求めてまっすぐ成長するのだとか。
さらに太陽の光があたるところにしか葉をつけないため節も少なく、30年かけて3000本までに間伐しながら育てることできめ細かい。吉野杉は、この育成方法によって何百年と美しい姿を維持してきたのです。
ちなみに吉野杉はその美しさから神社仏閣の建築材に使われることが多く、室町時代には豊臣秀吉が建てた大阪城にも使用されています。
2025.02.05(水)
文=平野美紀子
写真=三宅史郎