類は納得のいかない様子で腕を組んでいたが、軽く片眉を上げた。
「そうだ……そういえば祖父が認知症になる前は、『お前がいるとハロウィンが大盛り上がりだな』って笑っていたことがあったっけ……」
御蔵坂類には霊感がある。美蔵堂にもいわくつきの品が妙に集まる。
もしかしたら、彼は磁場でも狂わせているのかもしれない。
「しかし、君が嵯峨野くんを送ってあげたとは……意外だったな」
「たしかに……普段ならそんなことしないだろうが」
だが彼には好印象を持ったのだ。あの素直さ、明るさ、美蔵堂へ見せた気遣い、そして本に対する真摯さ……。
類は、腕を組んで静かに言った。
「なにもなかったなら、いいんだ」
その口ぶりが妙にさみしげなのが少し気になったが、彼は仕事だと言って出かけていってしまった。
了
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2024.10.29(火)