『ちむどんどん』は、返還から50年のタイミングで沖縄を題材にしたドラマだったにもかかわらず、沖縄問題に触れず、どこか常識からズレた人物たちを愉快に描写したホームドラマに徹した(唯一、第71回で、沖縄戦の遺骨や遺品を収集し、家族の元に返す活動を長年行っている人物が登場した)。そのため、主としてSNS上では「報道のNHK」としてはいかがなものかという失望の声が少なくなかったのである。

 その点『虎に翼』では、三淵嘉子に関する著書を持つNHK解説委員の清永聡が司法関連の取材スタッフとして入り、取材やモデル関係者への挨拶のコーディネートまで担当し、自身の出演する情報番組『みみより!解説』『午後LIVE ニュースーン』などで史実部分の解説を行うなどしており、「報道のNHK」の面目躍如といったところだ。

 清永は『虎に翼』への参加について「外の人から『報道は』『ドラマは』と言われることもありますが、そういう区分けはあまり意味がない。総体としてNHKで良いコンテンツを作ることがすべてだと思っています」と語っている(「Yahoo!ニュースエキスパート」2024年9月26日『「虎に翼」最終週にてんこ盛り過ぎる問題をNHK解説委員に丁寧に解説してもらった』)。

 NHKが報道に強いテレビ局としての矜持をもって、ニュース以外の番組制作にも一丸となって取り組もうと考えていることが見てとれる。

裁判官のドラマと公共放送には親和性がある

 戦後、憲法が改正され、第14条で​​​​​​「すべて国民は、法の下に平等である」「人種、信条、性別、社会的身分、門地により、政治的、経済的、社会的関係において差別されない」と記された。憲法改正に涙する寅子の姿はドラマのピークでもある。ところが、まだまだ完全に誰もが平等といえず、むしろ、ますます不平等が際立っていく。夫婦別姓問題、LGBTQ、原爆裁判、少年法改正、尊属殺人、ブルーパージ……と不平等な問題はいくらでもある。

2024.10.14(月)
文=木俣 冬