大河ドラマ「光る君へ」で主人公の紫式部を演じる吉高由里子さん。吉高さんは役作りに際して参考にしたマンガとは……。

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「本を読むのが苦手です!」

 紫式部は当時の記録や歴史的史料がほぼ残されていないので、役作りは、それはもう本当に大変で。私も「紫式部は『枕草子』の作者清少納言とライバル関係にあった」という話は聞いていたけど、それくらいのことしか知りませんでした。

 そもそも私はあまり本を読まない人間なのに、なぜか本を書く役を演じることが多いんですよ。NHKのドラマだけでも「花子とアン」の村岡花子とか、「風よあらしよ」の伊藤野枝とか。今回も紫式部のことを、全然知らないところから始まって、最初にスタッフから役作りのために「ドサッ」と膨大な資料を渡されて。こっちは台本読むのも必死なのに、「もうやめてくれぇ!」って叫びたくなったくらい。

 最後は(「光る君へ」の題字を揮毫した書家の)根本(知)先生に泣きつきました。私が「一体、何から読めば良いんですか。というか私は本を読むのが苦手なんです!」とぶっちゃけた。そうしたら『源氏物語』を漫画化した大和和紀さんの『あさきゆめみし』を薦めてくれました。

『あさきゆめみし』は「光る君へ」と違って、紫式部自身の物語ではないけど、それでも、読んでみると平安時代の雰囲気がイメージできるし、脚本家の大石静さんが描いた登場人物たちの愛嬌や茶目っ気もより深く理解できる。少女漫画ならではの恋愛模様に胸がキュンキュンする感じも似ている……いや、「光る君へ」の方が、もっと生々しいかもな(笑)。とにかく『源氏物語』ファンの人たちが、『あさきゆめみし』の好きなキャラを「光る君へ」の登場人物に重ね合わせながら見ているかも、なんて考えたりして、あの時代の物語を楽しむためのエッセンスはつかんだ気がしますね。

 

あれ見た時には「乙丸、強え〜!」って

 結局、紫式部ってどんな人だったのかな。それはいまだに考えています。何歳で亡くなったのかも、どんな亡くなり方をしたのかも分からない。たぶん視野が広くて洞察力を備えた女性だったんだろうけど、決して明るくはなかったとも思います。うーん……何と言うか、自分を信じてあげる力が強かったのかな。なにしろ『源氏物語』は全部で54帖もある。彼女から何を一番感じるかと言ったら、あれほど長いストーリーを書き続ける信念の強さですね。

2024.09.18(水)
文=吉高由里子