ドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』や映画『違国日記』など、映像作品での活躍が話題の瀬戸康史さん。『彼女を笑う人がいても』や『笑の大学』など舞台にも精力的に出演しており、その確かな表現力は演出家や演劇ファンからの信頼も厚い。
クローンを作ることが可能になった近未来を舞台にした舞台『A Number―数』は、秘密を抱える父親と、自分がクローンであることを知った息子の物語。クローンを含む3人の息子役に挑む瀬戸さんは現在、「生みの苦しみ」の真っ只中だという。
それでも魅了される舞台への思い、そして困難に直面しても常にポジティブでいられる、ハッピーなマインドを育んだ原点に迫ります。
「どう生まれたか」よりも「どう生きていくか」
――『A Number―数』は父親役を演じる堤真一さんとの二人芝居ですが、戯曲を読んでどんなメッセージを受け取りましたか?
堤さんもおっしゃっていましたが、「お父さんはなぜ息子のクローンを作ってしまったのだろう?」と思いました。ロボットが製造されるのとは大きく違い、クローンが作られるのは、別の心が生まれていくイメージがあるんです。
父が息子のクローンに会いたいという気持ちはわからなくはない。でもやっぱり、人間がやっちゃいけないことだという印象を受けました。
僕が演じるクローンを含む息子の3役は同じ遺伝子ですが、物語の最後に登場するマイケルは、ほかの二人と違ってとてもポジティブな生き方をしているんです。それは、彼の育った環境がよかったから。最終的には「どう生まれたか」よりも「どう生きていくか」が大事なんですよね。自分次第でいい方向に転換できるという考えはすごく共感できましたし、希望を持てる物語だと思いました。
2024.09.10(火)
文=松山 梢
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=田村和之
ヘア&メイク=小林純子