舞台に対する思いが変わった瞬間
――瀬戸さんは7年前、今回演出を手がけるジョナサン・マンビィさんのワークショップを受けたことがあるとか?
30人くらいの役者が参加してある戯曲をやったんですけど、本当に楽しくて。誰かの意見を否定するわけでもなく、それぞれの役者と「この戯曲ってどうだろう?」と対話を重ねるジョナサンさんの姿がとても印象的で。いつかご一緒したいと思っていたので、「『A Number―数』をやりませんか?」と言われて「ぜひお願いします!」という感じでした。
――ドラマや映画での活躍はもちろん、舞台にも精力的に出演されています。瀬戸さんがそれほど舞台に魅了される理由は?
うちの事務所には「俳優集団D-BOYS」という若手俳優グループがあって、僕も17歳から加入して舞台に出演していました。まだ全然芝居をやったことがない段階から、いろんな演出家さんと組ませてもらって。今となってはとてもありがたい経験でしたが、当時の僕はすごく怖かったんです。「失敗したらどうしよう」とか、「稽古でどう動こう」とか、作品と関係ないことばかり考えていました。
そんな中、2015年に『マーキュリー・ファー』で初めて白井晃さんの演出を受けたときに、自分の内面を全部見抜かれて、プライドも何もかも一度全部壊されたんです。それからですかね。舞台に対する思いが変わったのは。
余計なことを考えなくなったし、何をしても恥ずかしくないと思えるようになったんです。それは本当にありがたかったし、いい出会いに巡り会えているなと思います。
まずは自分の心が「やりたい」と思う仕事をすること
――白井晃さんをはじめ、前川知大さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん、三谷幸喜さん、栗山民也さん、そしてジョナサン・マンビィさんなど、錚々たる演出家とお仕事を経験されてきました。「いい出会いに巡り会えている」とのことですが、出会いを生み、育んでいくためにどんなことを意識されていますか?
若い頃は「誰とお仕事をしたい」という意志もなかったし、事務所が持ってきてくれたお仕事をやるという、完全に受け身だったんです。23~24歳くらいからちょっとずつ「人生は一度きりだから、好きなことをして生きていきたい」と意識が変わっていって。そこからすごく楽しくなったし、今は本当に好きな仕事をやれているように思います。
媚を売って気に入られようとも思っていないです。わりと僕は、第一印象で変な感じに受け取られることがないので、それはありがたいですけど(笑)。
自分が選んだお仕事だったらどんな辛いことも頑張れるし、責任感も生まれる。まずは自分の心が「やりたい」と思う仕事をすること、そして全力で楽しむことが、結果的にいい出会いにつながる気がします。
――「やりたい」お仕事とは?
自分が演じる姿が全く想像できない台本はすごく興味を抱きますね。今回の『A Number―数』は難解な戯曲なので、武者震いをしながら「挑戦してみよう!」と思いました。
2024.09.10(火)
文=松山 梢
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=田村和之
ヘア&メイク=小林純子