「対馬のハチミツは薬用と言っても、過言ではない」その理由は?
ニホンミツバチの採蜜は1年に一度のみ。対馬では冬ごもりをする前の9月頃に行います。それでも蜂洞の中の蜜を全部は取らず、越冬のために残しておくそう。
蜂洞は丸太をくりぬいた空洞で、巣が落ちないように十文字に交わした竹ひごを何段か重ねた造り。この丸洞から採蜜をするとなると、上から蜜をすくうか、チェーンソーで丸太を切断するか。そこで扇さんは考えました。
「対馬の伝統を崩したのは、私。丸洞ではなく、重箱型を作りました。これなら、箱と箱をガムテープで固定してあるだけなので、チェーンソーはいらない。とんとんと叩いて、“入っとんねー”と確認して、入っているところを採ればいい」
ニホンミツバチのハチミツは採れる量が少ないため、希少価値が高く、高価。スプーンでひと匙、口にしてみると、雑味のない奥深い味わい。甘露、とでもいうのでしょうか。
そんな扇さんにとって、忘れられない一文があるといいます(書いてあった本はどこかへ行ってしまったけれど)。「対馬のハチミツは薬用と言っても、過言ではない」。嗜好品を超えて、薬にもなるハチミツ。対馬の人々にとって、暮らしに欠かせない名産品です。
2024.09.07(土)
文・撮影=古関千恵子