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「僕個人の考えなんですけど…」使われがちな“枕詞”について思うこと

――ものすごい気遣いですね。

 あくまで理想は、です。できないときもあります。僕は「多様性」という言葉があまり好きではなくて。いろんな考えがあっていいと思うのですが、それを尊重するあまり、違うと思っても、何も言えなくなってしまうのは変じゃないかなと思うんです。少しくらい違う意見を交わしてもいいんじゃないかなと。全部が全部、相手がどう思うかを気にして、「これを言ってはいけない」と考えていたら大変ですよね。

 相手の意見に賛同できなかったら、「ふーん(あなたはそう思うんだね)」でいいと思うんですよ。

――そこで、無理に自分の意見を押し付ける必要もないし、相手を否定することもない。「ふーん」、あなたはあなた、私は私、ということですね。

 最近、「いろんな人がいていいと思うんですけど」とか「あくまで僕個人の考えなんですが」と、枕詞が多くなった気がして。僕も使ってしまうことがあるけれど。

――人それぞれ意見が違って当然という大前提を共有できていたら、そんなエクスキューズは必要はないですね。

 本当に大事なのは相手を思いやることだから。リスペクトがあれば、気にせず(自分の思うことを)言ってもいいんじゃないか、とギャルマインドを降臨させて、うまく折り合いをつけようとしています(笑)。

――でも、難しいところもありますよね。相手を慮って伝えたことが、相手にしてみれば図星すぎて受け止めてもらえなかったり、「わかるけど、いまそれを言われたくない」というような状況だったり。自分の発言が、自分の期待通りに相手に受け止めてもらえるとは限らない。

 そんなこと無理ですよ! だから、「違っていたら、ごめんね」でいいと思います。「ごめんなさい」と「ありがとう」ができれば大丈夫なはずです。でも、それが意外とできないですよね。

 自分もできていないことがあるので、理想形です。大事なことは、ほとんど幼稚園くらいで学んでいるんだよな、とつくづく思います。

2024.09.07(土)
文=黒瀬朋子
撮影=榎本麻美
スタイリスト=寒河江健(Emina)
ヘアメイク=堤紗也香