「事実婚」とは、結婚届を出さないで、事実上の結婚生活を送る夫婦の形です。ヨーロッパでは一般的で、例えばスウェーデンで事実婚・同棲をしている女性の割合は20~24歳で77%、25~29歳で43%、30~39歳で33%、嫡出でない子の割合は56%です。これに対して日本で嫡出でない子の割合は2003年でわずか1.9%と極めて低いのです(内閣府「国民生活白書」平成17年版)。

 日本では、事実婚はふつうの結婚である「法律婚」と比べてどんな違いがあるのでしょうか。事実婚を選択した理由として、女性は「夫婦別姓を通すため」「戸籍制度に反対」「夫は仕事、妻は家事という性別役割分担から解放されやすい」など、男性側は「相手の非婚の生き方の尊重」と回答した割合が高いようです(内閣府「国民生活白書」平成17年版)。

 事実婚と法律婚とが決定的に違うのは「税金」です。事実婚の場合、「配偶者控除」「配偶者特別控除」を受けることができません。例えば、法律婚の夫婦の場合、妻のパートでの収入が103万円以下のケースでは「配偶者控除」により夫の税負担が軽くなります。夫の所得税率が20%の場合、38万円の控除を受けることにより、約7万6000円分所得税が少なくなります。また、住民税でも33万円の控除受けることにより、約3万3000円分住民税が少なくなります(住民税の税率を10%とする)。共働きで扶養の範囲を超えて働いている夫婦の場合はあまり関係がないかもしれませんが、出産・子育て、親の介護、独立・起業、転職、大学院で勉強をするなど、長い人生では一時的にどちらかが仕事を離れる機会が出てくる可能性もありますね。

資産がある場合は大きな違いが

 資産があるというカップルは生前贈与や相続の際にも大きく違いが出てきます。婚姻期間が20年以上ある配偶者からマイホームやマイホームを購入するためのお金の贈与を受けた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで配偶者控除があるのですが、事実婚の場合は認められません。また、事実婚の夫婦には相続権がありません。法律婚の夫婦の場合、配偶者の税額軽減もあり、最低でも1億6000万円までの遺産額に対して相続税がかからないのですが、事実婚の場合はそうではありません。子供がいて、夫が子供を認知している場合は、子供には相続権が認められます。

 生命保険に関しては、事実婚のパートナーを死亡保険金受取人にし、万一の際には死亡保険金を受け取ることは一般にできます。ただし、保険金は相続税の課税対象となり、税額については相続税額の2割加算の適用を受けるので注意が必要です。

 さらに、不妊治療をしている夫婦は、要件を満たせば「特定不妊治療費助成」として最大150万円(1回15万円、通年5年度、合計10回まで)の助成金が出るのですが、「法律上の婚姻をしている夫婦」という要件があるため事実婚は対象になりません。

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2014.03.30(日)
文=花輪陽子
写真=bikeriderlondon / Shutterstock