街角には「伊太利亜」がいっぱい!
まず、一番多いパターンが「伊太利亜」である。これが、我が国における標準的な漢字表記になるであろう。何でも、漢字の本場・中国では、「意大利」と書くそうだ
![麻布台にあるカフェテラス「伊太利亜亭」。話題の新スポット、麻布台ヒルズからもほど近い。うっかり財布を編集部に忘れたのであいにく持ち合わせがなく、店に入ってはいないが、10種類を超えるパスタが楽しめるらしい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/d/1280wm/img_fdba91a3cc87a94eba539ce0ab733c911060656.jpg)
![新宿三丁目「伊太利亜市場BAR」。伊勢丹の裏の小道を渡った先のビルの2階にある。近くの花園神社で所持金のすべてを賽銭箱に投じ、イタリア特集号の完売を祈ったのであいにく持ち合わせがなく、店に入ってはいないが、活気溢れるムードの中、美味しいワインとともに素材を生かした料理が堪能できるらしい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/0/1280wm/img_b074e4d80b9c55afdf6721d89feb35041097761.jpg)
なお、「伊太利亜市場BAR」は、“バー”ではなく“バール”と読むとの由。それでこそイタリアンである。
それで思い出した。弊社の近くには「東京酒BAL」を標榜する居酒屋チェーンがあるのだけれど、BALとは一体何なのか。恐らく、“バル”と読ませたいのだろうが、でも、スペイン語の “バル”の綴りはBARである。
しかしまあ、原語のままBARと表記すると、英語の“バー”だと解釈されてしまい、スペインバルの雰囲気を狙ったスペシャルな意図が伝わらない。ええい、いっそのことBALと書いときゃ間違いなく“バル”と読んでくれるはず! という思惑が先走って、この不思議な店名にたどり着いたのだと察する。
片仮名で“バル”と表記すれば済む話だが、ここはどうしても意地でも横文字を使いたかったのだろう。ただ、それなりの規模のチェーン店を命名するのだから、さすがに辞書引かなかったなんてことはあるまい。ないと信じたい……。
![浅草の観音通りに店を構える「伊太利亜のじぇらぁとや」。浅草寺で所持金のすべてを賽銭箱に投じ、すみっコを始めとする編集部員の健康と幸せを祈ったためあいにく持ち合わせがなく、店に入ってはいないが、国内外からやってきた大勢の観光客が色とりどりのジェラートに舌鼓を打っているらしい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/c/2/1280wm/img_c2734e033a90c8511274f9a050394ad31032113.jpg)
その他、有名なところでは、「伊太利屋」というブランドが挙げられよう。その名の通り、イタリアの伝統と情熱を採り入れた日本発のメゾンである。テーマは「野生のエレガンス」。アニマル柄を我が国のファッションに導入した、画期的なブランドだ。
俺もいい年になったのだから、1年365日「海人(うみんちゅ)」のTシャツばかり着るのはそろそろやめにして、伊太利屋のこのワイルドな着こなしに学びたいと思っている(そういう経緯から、俺の社内における愛称は「うみんちゅ」である)。
![全国に店舗を展開する「伊太利屋」の赤坂店は、弊社より徒歩5分ほどの商業施設「サンローゼ赤坂」内に入居している。この写真は、スマホに着信があった振りをして会議を抜け出し、往復ほぼ10分で撮影してきたもの。なお、かつて同ブランドのグループ企業だった「ガレーヂ伊太利屋」という外車ディーラーが有明にある。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/7/1280wm/img_3792867d3d37849952d064ed6953e98b1015354.jpg)
他には、「伊太利庵」「伊多利庵」という飲食店も、さまざまな業態で全国に散在している。
しかし、他の片仮名国名を漢字表記した店名はあまり目にしないのに、なぜ伊太利亜は多いのかといえば、当て字をただ素直に読めばこれは「イタリア」だなと見当がつく明解さが理由だろう。その点、英吉利(イギリス)とか仏蘭西(フランス)とかは、ちょっとハイブロウで、読みあぐねる向きも少なくないのだと思う。
そこで、いつも考えるのは、西班牙(スペイン)という漢字表記のもたらす混乱である。地名の頭には方角を表す文字を使わない方がいいと思うのだ。例えば、南フランスを「南仏」と呼ぶ省略法を西スペインに用いると、「西西」となってしまうから。
2024.08.12(月)
文・撮影=ヤング