この記事の連載
Vol.1 Southbound|オールマン・ブラザーズ・バ...
Vol.2 乙女 パスタに感動|タンポポ
Vol.3 Bridges|ミルトン・ナシメント
●CREA Traveller編集部だより Vol.001
Southbound|オールマン・ブラザーズ・バンド
ナポリにもカプリ島にも行けなかった……

こんにちは。林家ポンペイこと、CREA Travellerスーパーバイザーのヤングと申します。
このたび、CREA Travellerの最新号「イタリア 理想の休日」が晴れて発売された。この特集では、ナポリやカプリ島、アマルフィ海岸を始めとした南イタリアの魅力を取材している。いわば、ニーハイのイタリアだ。弁慶の泣きどころ、ふくらはぎ、足の甲、そしてかかとまで、さまざまなデスティネーションが網羅されている。身内ながら、その仕上がりには心から驚嘆した。
……しかし、一つだけ不満がある。それは、この俺が南イタリアへの出張を命じられず、東京で留守番を余儀なくされたことだ。南イタリア、行く気満々だったのに。織田裕二主演の『アマルフィ 女神の報酬』を、すべての台詞を覚えるぐらい繰り返し観たのに。余勢を駆って、『アンダルシア 女神の報復』まで何回か観たのに。

ちいかわのキャラクターみたいな年若い女性編集長に「ピッツァとかパスタとか、本場のイタリア料理を食べてみたいんですけど」と直訴し(この時俺は、生まれて初めて「ピザ」ではなく「ピッツァ」と発語したのではないか)、さらに「あと、地元のルッコラとかセルバチコとかも」と付け加えたところ、「お前はその辺の草でも喰ってろ!」と即座に却下された。どうやら、前の晩にでも映画『翔んで埼玉』を観たと思われる。

自分はどちらかというと従順なタイプなので、本当にその辺の草を喰ってみることにした。参考書は、名脇役・岡本信人さんの『道草を喰う』(ぶんか社文庫)である。いろいろと調理のバリエーションを工夫しながら、その辺の草を喰ってみたが、なかなか美味しいではないか。編集長、ありがとうございます! 次の給料日まではこれで喰いつなぎます!

右:『道草を喰う』では、俳優の岡本信人が、アザミ、オオバコ、ハルジオンなど、雑草と見なされる路傍の植物の食べ方を紹介している。散歩が楽しくなる一冊。
羽田空港でイタリアへと赴く取材班一行に向かって社旗をぶん回しながら別れを告げ、編集部へと戻った俺は、特に当面やることもなかったので、さしたる意味もなく、会社の各階の給湯室にある五徳の頑固な焦げ付きを落としたり、ガレージに積まれた古タイヤを整理したり、ハードディスクに溜まった『赤い霊柩車』シリーズを一気見したり、大好きな要潤の物真似の練習に励んだりしていた。
とはいえ、無聊をかこちながらも、南イタリア、略して南伊への憧憬が尽きることはない。俺は単身、自腹を切って南伊へと向かうことにした。もう、社業なんてどうでもいい!
ということで、念願の南伊にやってきました。
2024.07.16(火)
文・撮影=ヤング