――出し抜かれる、ですか。あやとを出し抜くことができる女性ってどんな女性なのか、気になります。
山本 え~、それは私も気になります(笑)。どんな女性があやとを出し抜くことができるんだろう。あやとよりも一枚も二枚も上手な女性ですよね、きっと。
あと、これは「出し抜かれる」とは少し違いますが、私は相手の好みにすべてを合わせすぎて迷走したこともあったので、あやとはそういう女性は選ばないかもしれません。自分自身のそういう弱さも、恋愛自由競争に勝てない敗因だったなと今にして思います。
『恋マト』は「恋愛マンガ」というより「ヒューマンドラマ」
――では『恋マト』には、山本さんの恋愛談が教訓として入っているのでしょうか。
山本 私が実際にしてきた数々の痛い体験談は、決して「恋愛談」とは呼べない気がするんですよね。あえていうなら、「ヒューマンドラマ」かと。「ヒューマンドラマ」などと自分で言ってしまうのは、おこがましい気がしますが……。
――確かに、『恋マト』を表現するには、「恋愛マンガ」よりも「ヒューマンドラマ」のほうがしっくりきます。うまくいくと思っていたカップルがうまくいかなかったり、嫌な人だと思っていたら実はそれほど嫌な人ではなかったりという話も、現実によくありそうなエピソードです。
山本 「嫌な人だと思っていたら実はいい人だった」というのは、私が社会人になってからそういう人にたくさん出会ったからです。
たとえば仕事でイライラしている時とか、大きなミスをして1ミリも余裕がない時に、普段すごい嫌だと思っていた人がフォローしてくれて、実はいい人だということがわかったとか。
友達とか恋人って、基本的に休みで機嫌のいい日にしか会わないから、いいところだけ見ることができると思うんですけど、仕事となると、そうはいかないので、そういう局面で人間の意外な一面を知ることができた経験は、いまマンガを描くのにすごく役立っていると思います。
2024.08.15(木)
文=相澤洋美