自分と考えが違うキャラクターをどう動かすか

――逆に描くのが大変だったキャラクターはいますか?

山本 コントロールできないという意味では、2巻の「同棲終了女 春奈編」の主人公・春奈がいちばん難しかったです。私とはまったく考えが違うキャラクターなので、この場面でどう思うか、どういう言葉を選ぶか、どんな行動をするかなど、すごく悩みながら設定を考えました。

 春奈は10年間交際していた相手を、彼の会社の後輩に取られてしまうのですが、私だったらもっと大暴れすると思うし、そもそも10年もプロポーズを待てない気がします。春奈には私みたいなそういう強引さがないので、描くのにはかなり苦労しました。

――自分と違うキャラクターの場合は、どうやってリアリティを出しているのですか?

山本 そのキャラクターがなぜその言葉、行動を選んだのかを細かく説明できるようにひたすら考えています。考えても答えが出ない時は、そのキャラクターっぽい主人公が出てくる映画を観たり、インターネットでそのキャラクターが見そうなサイトを見たりして、妄想をふくらませます。そのキャラクターが実在したら実際に行きそうな洋服屋に行って、そこに来る人たちや売っている洋服を見たりすることもあります。

ちょっとやそっとではなかなかやめられない「ダメな恋愛」

――恋愛が人生のすべてだと思っていた理恵が少しずつ自分を取り戻していく姿は、傷付いた自分の親友が立ち直るようで、すごく感情移入してしまいました。「ダメな恋愛を忘れるには次の恋をすればいい」とよく言われますが、理恵にもあてはまると思われますか?

山本 ダメな恋愛をやめるのはとても難しいかと思います。もし次の恋愛というものが来てダメな恋愛を忘れられたら、それは『北風と太陽』の童話でいう太陽だと思いますけど、世の中には太陽が出ないパターンもあるじゃないですか……。そうなったら、雷が落ちて一回死ぬくらいの衝撃がないとダメな恋愛ってやめられないんじゃないかと思います。ちょっとやそっとではなかなかやめられないから辛いんですよね。

2024.08.16(金)
文=相澤洋美