山本 都合のいい展開にならないように、かなり意識してストーリーを考えています。

 具体的には、キャラクターひとりひとりに対し、家族構成や、どうしてその会社に入ったのか、どういう仕事をしているのかなど、すごく細かい部分まで考えて作り上げています。だいたいひとつのエピソードについて、キャラクターの背景をノート1冊分くらい書き込んでから、それぞれのキャラクターを動かすよう心がけています。

 たとえば、1巻の「やさぐれ女 美央編」で登場する、美央の親友のさくらという子は、美央の高校の同級生で腐れ縁です。成人式でたまたま会って、そこから交流が再開した、という設定です。美央は最初、コンビニのアルバイト店員にしようと考えていたのですが、性格や生い立ちを考えていくなかで、現在の職業に落ち着きました。

 あまりに設定が細かすぎて忘れてしまった部分も多いのですが、さくらがなぜ現在の趣味サークルに入っているかについても、設定ノートを読み返せば確認できるようにしています。あとからぶれないよう、細かく全部のキャラクターに生命を吹き込んでいます。

 

山本さん自身に似ていた「ダメ恋女・理恵」

――1巻のあとがきで、「ダメ恋女 理恵編」の主人公・理恵について、「自分自身に似ているから、描くのがとても楽だった」と書かれています。どんな部分が似ていると思われますか?

山本 理恵は本当に若い頃の私に似ているんです。ミーハーで、人の表面しか見ていないところや、自分が思っていることをちゃんと言えないところ、理想があるのにそれに向かって努力しているわけでもなく、惰性で会社に行ってお給料をもらっているところも、若い頃の私そのものです。

 理恵のなかでの「かわいい」は、細くて最新のファッションに身を包み、高い化粧品を使って、おしゃれな女性です。でも今の私は、女性のかわいさはそういう外見だけじゃないことを知っていますし、むしろ理恵のお姉ちゃんのように内面のかわいらしさが外に出ているパターンもあると思っています。最初は頑なに認めなかったそういう「かわいさ」を、徐々に受け入れていくというところも、私に似ていると思っています。

2024.08.16(金)
文=相澤洋美