見得を切りながら、しなやかに生きていきたいと思ってはいても、それってすごくバランスが難しいんですよね。見得を切り続けると偏屈に偏っていき、「ああはなりたくないな」と思ってきた扱いにくい爺さんに近づいている気もします。気をつけないと(笑)。
──『キングダム 大将軍の帰還』での大沢たかおさんと吉川さんの一騎打ちは、「扱いにくい爺さん」どころか、お互いに背負ってきたものの大きさや重さを感じる、大迫力のシーンとなっていました。
吉川 若いうちにかっこいいだろう、これが素敵なんだ、と思っていたことって、今とはまったく違いますよね。
若い頃には決して出せなかった人生の重みが、今は逆に出せるようになったかなと思います。
日本人はいまだに「若いことが美しい」みたいな風潮がありますが、「若い」って結局、「愚か」と同義語ですからね。「ピチピチさがいいだけで、味わいもへったくれもあったもんじゃない」という言い方だってできるわけですよ。
だから僕は、本当に面白いのは、50歳を過ぎてからだと思っています。なんて、負け惜しみも多少入っているかもしれませんが(笑)。
10歳以上年下の現役キックボクサーとトレーニング
──ご自分に限界を感じることは、まだなさそうですね。
吉川 そうですね。サッカー選手の三浦(知良)くんがまだ50歳くらいだった時に、「高校時代から練習量は全く変えていない」と教えてくれたんですよ。それを聞いて、「よし、俺も」と思いまして、それ以来、若い頃よりきついトレーニングをしていますが、今のところまだ全部クリアできています。
あんまり言うと無理してるように聞こえるかもしれませんが、2021年に狭心症の手術をしてからは心臓の調子もすこぶるよくなって、息も上がらなくなりました。
いま、現役のキックボクサーと一緒にトレーニングしているんですけど、彼は彼で、僕に負けたら立つ瀬がないと思うとやる気がみなぎるそうです。
2024.07.25(木)
文=相澤 洋美