中でも印象的だったのは、雅子さまが身に着けられたブラックのイヤリングとネックレスだ。どちらも大ぶりなデザインで、雅子さまのシンプルなジャケット姿をその場にふさわしく、シックに演出していた。控えめながら、皇后陛下としての貫禄を見せられた。

 

両陛下がマスクを着用されなかった理由

 当時、両陛下がマスクを着用されなかったのは、訪問国で定着している形式をふまえ、さらに他の参列者のことも考えられてのことだったのではないだろうか。以前から、雅子さまは、式典の性質や「お出ましになる場にふさわしいかどうか」という視点でお召し物を選ばれていると思うことがたびたびあった。そうしたお考えとも通底する姿勢を示されたように思う。

 天皇陛下は、国葬の前夜にバッキンガム宮殿で開かれたチャールズ国王夫妻主催のレセプションにも出席され、各国の首脳や王族らとともに過ごされたという。

 両陛下にとって、2020年のエリザベス女王からの招待は特別な意味をもつものだっただろう。結婚直後からお子さまのご誕生に関心が集まり、様々な報道があったなかで、「しばらくこちらで暮らしてはいかがですか」と、英国での生活を勧める手紙がエリザベス女王から届いたという宮内庁関係者の証言が報じられたこともあった(毎日新聞、2001年12月2日)。

 2024年のいま、延期されていた訪英がついに実現し、天皇ご一家にとっては忘れがたい節目となったのではないだろうか。

2024.07.16(火)
文=佐藤あさ子