また、女王陛下から、私の即位後初めての外国訪問として、私と皇后を英国に御招待いただいたことについて、そのお気持ちに皇后とともに心から感謝しております。〉

 当初宮内庁からは、前例にならって秋篠宮ご夫妻が国葬に参列される可能性についても言及があったようだが、「陛下のお気持ちを伺ってから」という留保がなされたようだ。前述の文書からは、まさに陛下の強いお気持ちがにじみでているようで、あまり感情をあらわにされない陛下には珍しいことだろう。当時、天皇陛下が参列される方向で調整が進められているという報道を受けて、深く納得した。

 雅子さまもご体調を見ながら参列を検討されるとして、結果的に両陛下での国葬への参列が実現した。エリザベス女王の訃報から間もなく国葬が執り行われたことで、通常の公務などよりも急な日程で、ご体調を調整されたことと拝察している。

 

 そんな中で迎えたご出発の朝。皇居・正門からセンチュリーに乗車されて、両陛下が姿を見せられた。雅子さまは小さく会釈を繰り返されながら、左手を頬の高さまであげて、小刻みに振られていた。いつもよりも控えめな笑顔を浮かべられていたようだ。「全国戦没者追悼式」などでお召しになるスーツを選ばれた。周辺に集まった人は200人以上にのぼっただろうか。桜田門に向かって、両陛下を見送る人々が大勢並んでいた。

ブラックフォーマルの“雅子さまの貫禄”

 ロンドンへ到着された両陛下が黒いマスクを着用されていたことは話題を呼んだ。エリザベス女王に対する弔意と、コロナの感染対策への意識のあらわれだったのだろう。だが、ウェストミンスター寺院ではマスクを着用されることなく、素顔を見せられた。外出先で両陛下がマスクを外されているお姿を拝見したのは、実に久しぶりのことだった。モーニングをお召しになった陛下の穏やかなご表情や、雅子さまの静かでいて堂々としたお振る舞いに圧倒された。

 雅子さまはブラックのジャケットとスカートをお召しになり、帽子からパンプスまで、喪に服したフォーマルな装いだった。黒はジュエリーの輝きが映える色でもある。

2024.07.16(火)
文=佐藤あさ子