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 鎌倉・小町通りから1本入った路地に、「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」がオープンしたのは1994年のこと。おいしいコーヒーと素敵なインテリア、居心地のいいサービスや音楽は、当時はまだ当たり前ではありませんでした。

 鎌倉、いや日本のカフェカルチャーの礎となった「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」。その歴史のすべてが詰まった本『鎌倉のカフェ ヴィヴモン ディモンシュの30年』(KADOKAWA)が発売され、話題です。

 マスターの堀内隆志さんと奥様の堀内千佳さん、仲良しご夫婦にお話を聞きました。


鎌倉はますます自由で活気がある

 カフェとしても、コーヒーの味わいにおいても全国的にその名を轟かしている鎌倉の人気カフェ「カフェ ヴィヴモン ディモンシュ」が、今年30周年を迎えました。30年というと、当たり前ですが、生まれたばかりの子どもは30歳になり、若者だった方々は年を重ね50代、60代になっている、そんな長い年月。とはいえ、駆け抜けてきた30年は意外とあっという間で、楽しいこともあれば、もちろん、辛く苦しいこともあっただろうなと想像するわけです。マスターの堀内隆志さんと奥様の堀内千佳さんに30年を振り返ってもらいました。

――マスターの堀内隆志さんがお店をオープンしたのは、1994年。はじめはお母様とふたりで切り盛りしていたそうですね。その当時から今も変わらず人気のオムライスは、実はお母様が考案されたもの。その後、マスターの堀内さんは結婚し、奥様の千佳さんがお店に入り、お母様は引退なさって今に至るわけですが、当初の鎌倉はどういう感じだったのでしょうか?

堀内隆志さん 僕がお店をオープンした当時、小町通りから1本入ったこの道には傘屋さんと焼肉屋さんがあって、お隣りは和食器屋さんと古い洋館で、その間にうちがありました。そして、斜め前には八百屋さんとパチンコ屋さん。なんだか、のどかでしたかねぇ(笑)。今はこんなにビルも建って、ちょっと様子は変わりましたかね。今も同じ店主で続いているのは傘屋さんとうちくらいかなぁ。

――半地下にあり、当時はカレー屋さんと間違えて入ってくる方もいて、「カレーはないの?」とよく聞かれていたとか。

隆志さん そうそう、壁が黄色かったもので(笑)。オープンしてしばらくすると、カフェブームというものがやってきて雑誌で取り上げられたりするようになり、少しずつお客さんも増えていきましたけれど、最初の頃は本当に暇でした(笑)。

2024.06.25(火)
文=赤澤かおり
写真=榎本麻美